取材は平日の夜だったが、来客は多かった。ホビー関係も人気商品のひとつで、飛ぶように売れる
東南アジアの国々をイメージしたときに「貧しいので物が壊れても直して使う人々」の姿が思い浮かぶ人もいるかと思う。
実際ミャンマーでは日本企業名を消さないままトラックやクレーンなどが使用されているし、ラオスやカンボジアでは日本の放置自転車が転売されて市民の足になっている。タイ国鉄はJRから譲渡された中古車両を現役で利用しており、日本の鉄道マニアがわざわざタイに見に来ることもある。
ただ、最近の東南アジア各国は決して貧しい国だとは言えない。どの国も景気がよく、貧富の格差は日本以上に大きいとはいえ、全体的に所得はかなり上がっている。東南アジアの代表的な国になったタイも、2015年あたりから国外からの投資額が減って景気後退が囁かれるが、非常に豊かな国になった。
それでもタイ人が物を大切にする姿に変化はない。タイは仏教が入ってくる以前からアニミズムがあり、物に精霊が宿っていると信じているからなのか、それとも単に10年くらい前までは貧しかった名残なのか、物が壊れても修理をして使う。街中にもガラクタを修理する商店があり、今でもブラウン管テレビが置いてあったりする。
そんなタイの中古品マーケットだが、最近ある変化が起きている。
小さな町工場などがただ同然で引き取った中古の家電を修理し、格安で売るというのがタイの中古品の流通だったが、この数年でまず日本人経営の中古品販売店が増えてきた。
在タイ在留邦人数が外務省の発表で6.5万人に達しているが、その中の大半は日系企業の駐在員とその家族で、さらにそのほとんどが有期での滞在になる。つまり、いつかは日本もしくはタイ以外の国に退去することになる。電圧や方式が違うためタイ国外では使えない家電も出てくるので、それらを引き取り、ほかの日本人やタイ人に販売する店が増えたのだ。
また、日本で中古品を仕入れ、それらをタイ各地で販売する業者が増えてきている。かつての日本神話が残っているのか、日本製品は品質がいいという印象から、中古品でも手に入れたいというタイ人も改めて急増しているのである。