そうした機運を受けて、2015年8月にバンコク都内で日本の中古品販売を始め、現在人気店にまで育て上げたタイ人のジャックさんに話を聞いてみた。
「まさる」を経営するジャックさん
ジャックさんはバンコクの下町エリアにあたるプラカノン地区で「まさる(Masaru Japan Store)」という中古品販売店を営んでおり、連日多くの客で賑わう人気店になっている。土日には平均600人ものタイ人客が訪れ、これまで3週間に1回のペースで輸入していたものを、今年1月から2週間に1回にするようにした。それほど需要が大きいのだという。
「弊社では日本のビジネスパートナーがおり、名古屋に倉庫も持っています。日本に倉庫を持つタイの中古品販売業者はかなり珍しいのではないかと思いますよ。これは弊社のアドバンテージです」
他店や日本人経営の店では買い取りも行うが、ジャックさんはあくまで日本で仕入れたものにこだわっている。それが店の付加価値になるからだ。
他店でも日本から輸入した中古品を扱う場合もあるが、タイ人経営だとパートナーをみつけるのが困難である。パートナーが見つからないタイ人経営店は、その場合どうやって商品を入手するのか? それには次のようなからくりがあり、それがタイ人経営店が生き延びれない土壌になっているという。
「日本には国外向けに中古品をコンテナ単位で販売する業者がいます。これを利用するタイの販売業者もいますが、一番の問題はコンテナを開けるまでなにが入っているかわからないことです」
チャイルドシートはタイでは普及率は高くないが、扱う店が少ないので人気がある。ほかにはベビーカーなども人気だそうだ
さすがに到着前までに通関用インボイスから品目は把握できるだろうが、発注時にはなにが手に入るのかはわからないのはまるで福袋のようだ。人気商品だけが詰め合わされていることはまずないというのは想像に難くない。売れない商品を押しつけられても仕方がないのだが、日本で仕入れ先を探す術のないタイ人業者はそれに頼るしかないし、実際、飛びつくように注文が入るのだそうだ。
「タイにだってトレンドがありますよ。なんでもいいわけではないですし、それぞれに適正価格というのがあります。今はネットで相場が簡単に調べられますし、ウソを吐いて仕事ができるのは昔のことです。現在のタイで商売に重要なのは誠実であることは間違いありません」
適当に押しつけられたものを、適当なことを言って売りさばくようではたちまち廃業してしまうのだとジャックさんは言う。信頼できるパートナーを得て、適正価格で仕入れ、相場よりも少し安く売る。これがジャックさんのビジネス方法だ。
「これまで私もたくさん失敗をしてきました。そこでトレンドを見極める目や相場勘を養いましたし、なにより信頼できる日本人パートナーと出会えたことが私のラッキーです」
今後もジャックさんはタイの中古市場で大きな活躍を見せるつもりだ。
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食器関係も多いが、例えばこの鍋は529THBは仕入れ時ではなく、今のレートで約1760円。中古でも日本のものというだけでやや高い
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古着もあるが、ジャックさん曰く「流行の関係であまり手を出したくない分野」とのことで、品数は少なめ
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下町の裏通りにある「まさる」。同じ小路には日本人経営の中古品販売店が大きく店を構えている
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NaturalNENEAM) 取材協力/
Masaru Japan Store