国際的テロ組織「ISIS」が日本にもたらす悪影響
2014.09.16
イラク、シリアでテロ行為を働き、8月には日本人の湯川遥菜氏を拘束したイスラム教スンニ派過激組織「ISIS」。銀行、石油精製所などを襲い、資金力を得てきたこのテロ組織の背後には、アメリカとの溝を深めたイスラムの盟主の姿があった……。ISISがもたらす悪影響を闇株新聞氏が読み解く
(ブログ&有料メルマガ管理人「闇株新聞」氏)
ISISとは「Islamic State of Iraq and Syria」。「イスラム国」と訳されているが、国際的に承認された国ではない。’00年にヨルダン人のザルカーウィーが設立したテロ組織が前身で、’04年にはビン・ラディン率いる国際的テロ組織・アルカイーダと合流したものの、’06年には分裂していた。
ISISとは、前例がないほど資金力と近代兵器と残忍さを備えたテロ組織である。イラク北部で中央銀行支店から4億ドルを強奪し、クルド人自治区のパイプラインを制圧して奪った原油をスポット市場で換金し、新たな人材と武器を調達して対立するイスラム教シーア派やクルド人らを虐殺しているようである。ISISはスンニ派であり、’10年から指揮をとるアブー・バクル・アル=バグダディーをカリフとして、世界中のイスラム教徒は忠誠を誓うべきと主張している。イスラム教徒は全世界に16億人、うちスンニ派は14億人もいるので、もしバグダディーが真のリーダーとなれば、中東のパワーバランスが崩れ、原油価格にも重大な影響を与える。そうなると最も影響を受けるのが原油の中東依存が大きい日本である。
このISISがテロ行為を働き続けている背景には、複雑な世界情勢もある。もともと中東は英国とフランスが支配していたが、戦後は米国がサウジアラビアに接近して膨大な石油利権を獲得し、中東でリーダーシップを発揮してきた。ところがオバマ大統領はこの最も重要なパートナーであるサウジ王室との関係をギクシャクさせてしまった。サウジはスンニ派でも最も戒律が厳しいワッハーブ派であるが、オバマはイラクでフセイン元大統領を追放したあと、シーア派の現政権の後ろ盾となり、最近はシーア派のイランとの対話も始めてしまった。スンニ派とシーア派は1350年以上も憎み合ってきたため、サウジ王室にとって容認できるはずがなく、昨年サウジは国連安全保障理事会の非常任理事国を辞退してしまった。
⇒【後編】に続く https://hbol.jp/7262
【選者】「闇株新聞」氏
’10年にブログ「闇株新聞」(http://yamikabu.blog136.fc2.com/)を創刊。管理人は大手証券においてトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった経験を生かして記事を執筆。特に’11年10月の「オリンパス事件」や’12年3月の「AIJ投資顧問事件」で専門家もうなる詳細記事を書いて話題に。’12年から有料メルマガ「闇株新聞プレミアム」(月額2600円)を開始。『闇株新聞 the book』(ダイヤモンド社)も発売中
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