日野市役所「封筒墨消し騒動」に潜む危うさ

菅野完

日野市役所が掲載した文言

 10月30日、東京都の日野市は、「古い種類の封筒の誤った使用について」と題するプレスリリースを出した。

 このプレスリリースは、日野市役所の封筒に表記された「日本国憲法の理念」という文言が墨消しされていたとしてSNSなどで騒動になった一件に対して出されたものだ。同リリースで日野市は、「古い種類の封筒を使用する際に、所属長が表示の一部を消すことについて曖昧な指示をしたことにより、当課の職員が消す必要のない箇所まで誤って消してしまったもの」と釈明を行っている。

公務員の「憲法尊重擁護義務」はどこに?

「私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。」

 これは、国家公務員の採用時に提出される宣誓書の書式だ(国家公務員法97条、職員の服務の宣誓に関する政令1条別記様式)。全ての国家公務員は、一般企業でいう正規・非正規の区別なく、就職時にこの誓約書を提出することを義務付けられている。一読すれば明らかなように、この誓約は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定められた憲法99条の規定にもとづくものだ。

 日野市も職員の採用にあたり、これと同じ文面の誓約書を提出するよう義務付けている(日野市職員の服務の宣誓に関する条例)。

「日本国憲法の理念を守ろう」の文言を墨塗りした職員は、自分がこの誓約書にサインしたことも忘れていたのだろうか?

 この墨塗り作業を担当した環境共生部に電話取材を行ったところ、「問題の封筒は2010年に印刷し利用したもの。残余の封筒を有効利用するため、今はすでに返上したISO14001の表記を墨塗りする必要があった。しかし上長による指示が曖昧だったため、作業担当者が「日本国憲法の精神を尊重しましょう」の文言まで消してしまった」というのが事の顛末だと、同部の中島部長が回答してくれた。

 中島環境共生部長の釈明を聞きながら、気になったことがある。「今はすでに返上したIS014001」という箇所だ。

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封筒の文言を墨塗させた「空気」

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