元PRIDE代表・榊原信行氏を直撃!「RIZINは各国のプロモーションと相乗効果を狙うビジネスモデル」

 ほんの数年前まで、「大晦日といえば格闘技」というのが定番化していた時代があった。そんな年末の風物詩『PRIDE』の代表だった榊原信行氏が再び格闘技界に「復帰」した。  聖地・さいたまスーパーアリーナで、12月29日(木)・31日(土)と2日間に渡って開催される新格闘技イベント「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX(ライジン・ファイティング・ワールド・グランプリ)2015」をぶちあげた榊原氏に、再び彼が格闘技ビジネスの世界に戻ってきたことの意味を尋ねてみた。 ⇒【前回】はこちら ----------------------------------
榊原信行氏

「10年間PRIDEで築いた実績や経験、人脈が助けになった」という

「フェデレーションにしてもビジネススキーム自体は変わらないと思います。収入源はチケットと放映権料とマーチャンダイズとネット配信やSNSでの売り上げです。ただ、選手との契約は、我々は今まで選手とダイレクトに契約していたんですが、これからは団体と契約する感じになります。つまり、今回青木真也選手がRIZINに出ますが、青木選手との契約ではなく、ONEとの契約です。ONEが持っている青木真也選手との契約を一試合分買うという感じです。そうすれば彼らと揉めることはありません。トーナメントにしても、プロモーション対抗戦ですが賞金はプロモーションに払われます。選手との配分はそのプロモーションが決めることになる。また、その選手が出た試合の放映権の窓口も、その選手が所属する地元プロモーションに委託することになります。例えばポーランドのKSWとかが、普段彼らの試合を放映している地元放送局と話をして彼らを通じて売ってもらう。彼らにはコミッションを払うことになります」 ――メリットが大きそうですね。 「それぞれの国にある放送局に今から僕らが営業かけても時間がかかるところを、プロモーションを通じて世界各国の放送環境を一瞬にして手に入れられるわけですからね。それに、実際に選手契約も何もなくても大規模な大会を開ける。これはニュートラルであるがためにできることかなと。また、ONEでもベラトールでも、アライアンスを組めば彼らの通常の大会の中で大晦日はRIZINというのがあるよとブームアップしてくれるわけでしょう。それを、我々が自分たちのプロモーションを立ててアメリカで広報していこうと思ったら時間と労力が大変なものになる。もちろん、各国のプロモーションにとっても自分たちの選手が団体に留まったままRIZINを通じて世界中で中継されることで、団体の認知度が上がります。今までは育った選手がUFCに行ったら、その地方のプロモーションへのバックはほとんどなかった。それが看板選手を地元に置いたまま、世界の舞台で戦いたいという選手のニーズも、プロモーションの知名度を広げたいという団体のニーズも満たせるんです。そう考えると、この方法が垂直型にビッグイベントが打てる一番効率がいい方法だったんです。もちろんこうしたことができる担保は10年間PRIDEを構築してきたという実績や経験、人脈が財産として残っていたからですが」 ――しかし、ヒョードル選手の招聘などでは米格闘技メディアの「Wrestling Observer」などでは250万ドルものお金が動き、背後にオイルマネーがあるのではなどと書かれましたが。 「それはありません。確かに、バーレーンのKHKという若い格闘技好きの王子が設立したアマチュア格闘技チームがあるんですが、今回彼にも会ったのです。そこで僕らの話をしたら、いずれはKHKをバーレーン代表として出して世界に知らしめたいというビジョンもあって、自分も観に行きたいと言ってくれたのです。もちろん、中東の王子はさまざまなものに投資するので、格闘技もその一環として考えてくれることがあるかもしれませんが、実際はそんなマンガみたいにうまい話はありません(笑)」 ――ただ、今後は大きなビジョンのためにも出資者は必要ですね。 「そういう意味で、今回の大晦日は『ショーケース』なんです。ですから、日本の地上波放送だけでなく、アメリカのスパイクTVでの放映もまずは多くの人に見てもらいたいからこその無料放送なのです。今回の興行を見てもらって、投資家の人に考えてもらいたいと思っています」 ――目指すは以前描いていたUFCのチャンピオンとRIZINのチャンピオンのメガファイトですか? 「いえ。我々はあくまでも競技会です。彼らと同じ土俵では勝負していない。競技会の主催者でしかない。UFCは巨大プロモーションですが、僕らからするとUFCもベラトールもパンクラスもそれぞれ一プロモーションというスタンス。だから世界中のプロモーションの皆さん、ぜひ選手を送り出して。UFCも同様ですです。そして我々に資金力ができてトーナメントの賞金も欧州チャンピオンズリーグのように80億円とかを出せるようになれば、UFCも王者を参戦させたくなると思っています」 さかきばらのぶゆき●東海テレビ事業を経て2003年、ドリームステージエンターテインメント代表取締役に就任。PRIDEの代表として黄金時代を築き上げる。07年からFC琉球の経営に参画。’15年10月、新格闘技イベント「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX(ライジン・ファイティング・ワールド・グランプリ)2015」を発表した <取材・文/HBO取材班 撮影/菊竹規>
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