蓬莱の豚まんは、なぜ底に木が敷かれているのか?
2015.10.18
今年で創業70周年を迎えるという中華料理店老舗・蓬莱。世間では「東の崎陽軒、西の蓬莱」と呼ばれるほど、持ち帰り用の“豚まん”は人気が高く、大阪土産の定番となっている。
しかし、一見するとどこにでもありそうなこの豚まん、なぜこれほどまでに多く人に支持されるのだろうか? その美味しさの秘密を探るべく、551蓬莱の製造部門担当部長・柏本氏に話を聞いてみた。
「特別なことは特にしていません。今も創業時の作り方通りです」
そう語る柏本氏だが、入社時に創業者から言われた言葉は、今も鮮明に覚えていると言う。
「造り手側が、おかあさんが作った感を出せれば、美味しいものができると教わりました。だから551の豚まんは、からしから何まで、すべて手作り。出来立てのものを食べてもらえるよう、販売店で作ったものを、そのままお出ししています」
冷凍の豚まんを扱わないのも、これが理由。「蓬莱」ブランドで販売されている冷凍品は、創業メンバーの別会社「蓬莱本館」の製品のようだ。
551のこだわりは“作りたて”だけではない、それは「東の崎陽軒」も取り入れている“木の香り”にある。具体的には、豚まんの底に敷かれている“松の木”が、それに当たる。
「ウチでは“ざぶとん”と呼んでいるのですが、この松の木の香りが、豚まんの味を引き立ててくれます。でも、それがわかったのは、実は5~6年前のことなんです。昔は、たこ焼きの入れ物も弁当の箱も、木が使われるのが一般的でしたが、時代とともにみんな、紙やプラスチックに変わり、業者もどんどん減っていきました。ウチが取引している職人さんも、いつか後継者問題でなくなる可能性があると思い、白樺など別の木や紙で試してみたんです。でも、味が全然変わってしまう。その時に初めて気付いたんです。551の味は松の木のざぶとんなくして、成立しないことに」
551が使っているざぶとんは、四国で切り出した松の木を使用していると言う。「原価的には割高」だそうだが、古来より木の文化が根付き、味に敏感な日本人には、欠かすことのできない重要な素材なのだ。
とはいえ、このざぶとんには、豚まんの皮がひっつきがちだ。実際、「ざぶとんに付いた皮をうまく食べる方法を教えて欲しい」との問い合わせを受けることがたまにあると言う。この点についてもいろいろ試行錯誤を繰り返したようだが、最終的な結論は
「歯でしごく! それが大阪らしい食べ方(笑)」
に至ったとのこと。お世辞にも上品な食べ方とは言えないが、これこそが“食い倒れグルメ”の真髄なのだろう!<文・写真/HBO編集部>
“オカンの味”の再現が美味しさの秘訣
美味しさをより引き立てる“松の木”の存在
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