インバウンド消費は医療にも。増える中国人医療ツーリスト

我妻伊都

大連にある病院の診察室(大連ローカル提供)

「地方の病院にとって保険診療だけで地域医療を維持することは厳しくなりつつあり、自由診療を増やしていくことが重要になっています」  こう語るのは、中国からの医療ツーリズムを展開する「ビジット・ジャパン」の井上智樹代表だ。  同社は、2013年に福岡市で創業された新しい会社だが、井上代表は、中国大連や深センで人材紹介ビジネスも展開しており、そのネットワークを生かして中国の富裕層への医療ツーリズムを手がけている。  中国からの医療ツーリズムの現状について井上氏へ話を聞かせてもらった。 「日本の医療ツーリズムは世界的な流れからすると非常に遅れています。外国人の受け入れに難色を示す病院が多く、特に東京や福岡のような都市部の病院は保険診療で現状十分やっていけるためか、受け入れを要請しても相手にしてもらえないのが現実です」  そんな中、地方から積極的に医療ツーリズムに取り組む病院が現れた。2010年1月30日に国内初の医療ツーリズムの実証実験を実施したのが長崎の西諫早病院だった。ビジット・ジャパンは、2013年に西諫早病院と業務提携を結んでいる。 「日本は世界トップレベルの高度医療設備が充実しており、さらに、日本以外の先進国と比べ安価に最新治療や検診を受けることができます。特に日本が得意としているのは、がん治療で、その技術、ノウハウ、高度設備は世界一と言っても過言ではありません。近年、中国ではがん患者が急増しており、2020年までにがん患者数は600万人に達すると言われ不安を抱える人が増えています。そうした背景から、現在、もっとも力を入れているのが、早期がん検診ができるPET/CT検診です。他にもセカンドオピニオンコースを希望される人も多く、医療ツーリズムの日程は、2泊3日から4泊5日。費用は、検診費用、医療通訳、検診結果の翻訳、医療滞在ビザ、全行程の専用車、高級温泉旅館、食事、往復の航空券等を含めて3万元(約56万円)からご案内しています」  2011年1月1日から日本政府は外国人向けの医療滞在ビザ発給を開始した。外務省の統計によると2013年発給された医療滞在ビザは299と意外と少ないが、短期滞在ビザなどで医療検診を受けても問題ないので代用されているのが現状だ。しかし、医療滞在ビザは、同伴する家族の滞在も認められるなど利便性が高いので今後、発給数が増えると予想される。 ※次回「安全と安心を求めて来日する中国人医療ツアラー」 <取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma
関連記事