イラっとさせるビジネスメールへの最善の対処法

写真はイメージです。

 ビジネスメールのトラブルは尽きない。  送りっぱなしに読み飛ばし。やたらと返信が遅かったり、余計なひと言が書かれていたり。イラッとするメールにどう対峙すべきか。  今回は、江戸の町を舞台に金貸しの活躍を描いた『烏金(からすがね)』(西條奈加・光文社時代小説文庫)から対処法のヒントを探りたい。本作は、強欲な金貸し・お吟のもとに、主人公・浅吉が転がりこみ、金貸し業を手伝い始めるところから物語が始まる。 「見ないようにしていると、その化け物はどんどんふくらむ」  主人公・浅吉は借金に苦しむ客たちに、借りた金の一覧表を作るよう、助言する。見たくないものほど直視したほうがいい。それこそが問題解決の糸口をつかむ秘訣だと、浅吉は諭す。  これはビジネスメールにも言えることだ。  厄介なメールが届くと、処理を後回しにしたくなる。だが、先送りは気が重くなるだけ。いずれ対応するなら、さっさと終わらせたほうがラクに決まっているのだ。 「振る袖がねえなら、拵(こしら)えてやったほうが早えだろ」  浅吉による借金の取り立ては一風変わっていた。胸ぐらをつかんで脅す代わりに、仕事を斡旋する。経営難の八百屋には新規の仕入れ先と顧客を紹介。盗みで生計を立てる子どもたちには商売の手ほどきをする。  ここで注目すべきは「環境作り」である。例えば、メールの返信が遅いなら、返事が来るまで催促する。早く返事が戻ってきたら、すぐに「ありがとうございます」と感謝を伝える。返信が早いといい気分になれると、さりげなく相手の記憶にすりこみ、釘を刺す。 「てめえの好き嫌いなんぞ、どうでもいい」  浅吉は、かっぱらいで稼ぐ子どもたちをなんとか更正させようと奔走する。リーダー格の少年・勝平は「説教はごめんだ」と反発する。だが、浅吉は「てめえの好き嫌いなんぞ、どうでもいい」とキッパリ。  とらわれまいとしても、ひょっこり顔を出すのが「好き嫌い」。たかがメールに腹が立つのは、相性の問題もありそうだ。まずは突発的な感情を脇において、やり過ごす。その積み重ねがイライラへの耐性を育てる。 <文/島影真奈美> ―【仕事に効く時代小説】『烏金』(西條奈加・光文社時代小説文庫)- <プロフィール> しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。
烏金

今までにない痛快時代エンターテインメント小説、誕生!!

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