職場での派閥争いを生き抜く術

 派閥を作りたがる人はどこの世界にも、どんな組織にもいる。 派閥 とりわけ厄介なのが、職場での派閥争い。お互いの悪口にミスのなすりつけ合い。仲の悪い上司の板挟みになることもある。「どちらの味方につくのか」という無言のプレッシャーに、どう対処すべきか。  今回は、豊臣秀吉の寵臣で落語家の始祖とも言われる曽呂利新左衛門の半生を描いた『曽呂利!』(谷津矢車著・実業乃日本社)から、派閥争いを生き抜く術を探りたい。本作の主人公である曽呂利は口先三寸で秀吉の側近に抜擢され、百戦錬磨の武将たちを手玉に取る。

「まあ、気負わんでもええんちゃうか? いつか、機は巡ってくるさかい」

 秀吉の重臣のひとり、石田三成が福島正則らに襲撃される事件が起きる。黒幕はどうも徳川家康らしい。主人公・曽呂利は、三成に家康のもとに逃げ込むよう提案し、「まあ、気負わんでもええんちゃうか? いつか、機は巡ってくるさかい」と励ます。  おどけた物言いで気負いを打ち崩す。この曽呂利の姿勢は、派閥争いに直面したときにも応用できる。巻き込まれたくないと必死に抗う代わりに、たいしたトラブルではないと軽んじて見せる。打開策を見つけるには、まず自分自身を動揺から解き放つのが先決だ。

「嘘っていうのはどうしてもペラッペラやから、いかにも自信ありげに言わなあかん」

 派閥への誘いをのらりくらりとかわしたいことがある。そんなときに覚えておきたいのが「嘘」とのつきあい方。信用させるには「いかにも自信ありげに言わなあかん」というのが曽呂利の持論だ。  嘘などつかずにすませたいと思う人も多いだろう。だが、自衛のための嘘もある。例えば、派閥の一方にランチに誘われ、わざわざ「派閥争いがイヤだから」と断るのは火に油をそぐようなもの。素知らぬ態度を貫くのは世渡りの基本スキルである。

「どんな博打も、ただ打っただけじゃ勝てまへん。色んなもんを積み上げて、勝ちを取りにいくもんや」

 打倒・徳川家康を誓う石田三成。曽呂利は「どんな博打も、ただ打っただけじゃ勝てまへん」と戒める。同時に「色んなもんを積み上げて、勝ちに取りに行くもんや」と背中を押す。  ビジネスマンにとって、派閥を切り捨てるのも、積極的に関わるのも等しく博打だ。日頃から味方を探し、足もとを固め、来たるべき選択の日を待ちたい。上司の不仲をとりなす苦労も周囲の信頼として積み上げられ、いずれ役に立つ日がやってくるはずだ。 <文/島影真奈美> ―【仕事に効く時代小説】『曽呂利!』(谷津矢車著・実業乃日本社)- <プロフィール> しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。
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