消えた北朝鮮人やり手経営者――ある北朝鮮系DTP会社の倒産

古い集合住宅も残る中国丹東の中朝国境近くの街

 北朝鮮人の辺氏が中国丹東で経営していたDTP会社が、2015年春節(旧正月)前に静かに倒産した。社長不在により決済や判断ができず、資金繰りに行き詰まったためだ。  辺氏を知る大連の日本人DTP会社経営者は、辺氏についてこう語る。 「辺さんは日本語や中国語、英語など6か国語が流暢に話せ、主に日本企業相手にビジネスを展開していたやり手の経営者でした」  辺氏は、45歳の男性。彼が経営していた会社は倒産し、彼自身も音信不通のままだ。彼自身の命運を左右したのは、進出したカンボジアの首都プノンペンだった。  DTPとは、「DeskTop Publishing」の略で、出版物の原稿デザインやレイアウト作成などをコンピュータ上で行う作業のことで、デザインなどを作るDTPソフトと、画像編集ソフトとを組み合わせて作業を行う。現在、ほとんどのポスターやチラシ、新聞、書籍、雑誌など商業出版物の編集作業はDTPによって行われている。  インターネットの高速化やクラウドの進化は、DTP作業を海外で行うことを可能にし、日本から海外企業へ依頼するケースも増加している。海外で日本企業の仕事を請け負うDTP業務は、コールセンターやデータ入力と同じくオフショアビジネスに分類されることもある。  辺氏の会社は、主に日本企業の仕事を受けており、順調だったはずが、なぜ彼は行方不明になるような事態に至ったのだろうか。 「辺さんは今から6~7年前に、丹東でDTP企業を立ち上げて徐々に規模を大きくしたようです。彼は、北朝鮮人ですが、非常に気さくで、日本のことにも精通しており、納期もしっかりと守ることから徐々に信頼を集めていったのでしょう。スタッフは、北朝鮮と中国の両国から採用していたそうです」(前出の日本人経営者)  辺氏が進出を果たしたカンボジアと北朝鮮は歴史的に友好関係にあり、首都プノンペンには金日成通りもあるくらいだ。語学センスに長けた辺氏は、北朝鮮にいる時にカンボジアの言語であるクメール語も学び操れるようになっていたという。 ⇒【後編】消えた北朝鮮人経営者―カンボジア進出での思わぬ落とし穴https://hbol.jp/38003 <取材・文・撮影/我妻伊都>
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