似非「伝統」や穴だらけの「少子化」論。選択的夫婦別姓をめぐる日本の議論について外国人に聞いてみた

男女同性が「伝統」はホント?

 <伝統>  夫婦別姓に限らず、「伝統」や「文化」といった言葉は、日本社会のターニング・ポイントにおいて、必ず出てくるフレーズだ。こうした反論について、外国人たちはどんな意見を持っているのだろう。  「そもそも、日本でいう『伝統』は、わりと新しいことが多いですよね。よくよく歴史を見てみると、たいして古くないという(苦笑)。歴史的に見たら、日本では苗字を持っている期間のほうが圧倒的に短いじゃないですか」(男性・ドイツ人)  「まったくナンセンスですし、ハンコかITかの議論と同じで、まるで今の時代に合っていません。日本でいう『伝統』は『既得権益』の言い換えに思えます。日本の苗字は山とか川が多いから、山田さんと川口さんで結婚するなら、山口さんとか川田さんとか、平等に混ぜちゃえばいいんじゃないですか?」(男性・アメリカ人)  「夫婦混姓」の議論はさておき、「伝統」と「既得権益」が重なっている面は、決して少なくないだろう。

現在の制度は1947年から

 ちなみに、法務省公式HPの選択的夫婦別姓についてのFAQでは、こうした「伝統」について下記のように説明されている。(参照:法務省)  “夫婦が同じ氏を名乗るという慣行が定着したのは、明治時代からだといわれています。  明治31年(1898年)に施行された戦前の民法では、戸主と家族は家の氏を名乗ることとされた結果、夫婦は同じ氏を称するという制度が採用されました。  明治時代より前は、そもそも庶民には氏を名乗ることは許されていませんでした。  第二次世界大戦後の昭和22年(1947年)に施行された民法では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」とされました。これが、現在の制度です”  さて、読者の皆さんは、これを長い「伝統」と言えるだろうか? 戦後は言うに及ばずだが、戦前の民法でも120年ほどの歴史しかないのだが……。
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穴だらけの「少子化を加速させる論」
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