公開されているウィッグ工場視察ツアー日程を見ると、
初日 午後、琿春集合。琿春宿泊
2日目 午前、羅津へ移動。午後、羅先市政府よる加工産業や推奨政策などの説明会。各工場によるプレゼンテーション。素材を渡してサンプル品製作を依頼することもできる。
3日目 3~4工場を見学。工場担当者と契約内容や条件について商談。羅先市政府から輸出通関、物流・輸送サービスについての説明会
4日目 再訪問や追加視察を希望する工場があれば調整。工場担当者とより詳細な商談。この場で契約も可能。羅先市政府から進出する中国企業を支援するするための法律改正や制度についてフォローアップ
5日目 朝食後、琿春へ移動。昼、解散。追加説明を希望する場合は個別説明も可能
羅先市政府が、ウイッグの生産実績3年以上で、熟練工数千人を雇用する工場を責任持って厳選紹介する。さらに生産管理、輸送、通関を一元管理すると謳っている。
本当にそんなことができるのかは別として、スケジュールを見て気づくのは、中朝それぞれの入国時に隔離期間がまったくないことだ。つまり、隔離なし前提の日程になっている。ツアー説明に
隔離についての説明は一切ない。
中朝国境のイミグレーション
中国は現時点でもすべての入国者に対して14日間の指定ホテルでの強制隔離。加えて、今年に入ってから新型コロナウイルスの感染が再拡大した吉林省を含む東北3省には、2(ホテル)+1(自宅)として3週間の隔離を実施するなど徹底した防疫体制を続けている。
そんな状況にもかかわらず、国外である北朝鮮からの帰国者が隔離なしなんてありえるのだろううか。
この謎を解く鍵はツアーについてのFAQにありそうだ。
参加に必要なものとして、入出境許可証、身分証明証となっている。パスポートは必須ではなく、
入出境許可証となっている。
入出境許可証とは、中国から自国領と主張する台湾などを訪問するときに発行されるもので台湾側はビザ扱いで処理している(パスポートは必要)。他にも中国人が香港やマカオを訪れるときにも使われる。
要するに入出境許可証は、中国から見て自国領とみなしている場所を訪れるときに使用するものだ。
このツアーは、羅先を中国国内移動扱いにすることで、出入国ではないので隔離も不要としているのではないか。この仮説を元に改めてツアー説明を読むと、
出国や入国という言葉がまったく使われていないことに気づく。
一方、丹東で北朝鮮や貿易事業に携わる関係者は、
視察ツアー実施には懐疑的な見方を示す。その一方で、丹東の加工貿易業者は、どこも非常に厳しい状況で、一刻も早く貿易を再開させたいと考えていると話す。
仮に中国帰国後に隔離されてもスマートフォンがあれば業務に支障はないので、隔離のリスクよりも1日でも早く契約を済ませて貿易を稼働させるほうがメリットは大きいと考える人もいるのかもしれない。
<取材・文・写真/中野鷹>