「カルト2世問題」か、それとも「宗教2世問題」か。<NHK特集から見える第三者にとっての課題(2)>

第三者の役割

 ハートネットTVには第三者が意識すべき、あるいは第三者に意識させるべき視点が決定的に不足していた。しかし、上記のような当事者の目的や問題意識にはしっかり寄り添っている。制作サイドがどこまで自覚的だったかはわからないが、当事者の声を代弁したという意義はある。  だから当事者が番組を好意的に評価し励みにすることを、私は否定したくない。誰かを傷つけるようなことでもない限り、当事者たちが発信する意見の内容も(たとえ私とは見方や意見が違っても)尊重したい。SNSの普及や当事者による手記の出版ブーム以前は当事者自身がダイレクトに発信する機会や手段が多くなかっただけに、まずは当事者が必要と考えることを存分に発信できる状況であることが何よりも重要だ。  それがなければ、第三者が総合的な議論をすることもできない。もともと1世についての「カルト問題」も、被害を受けた当事者たちからの相談や発信が足がかりとなって、今日まで来ている。  前述のように、言葉の上では「カルト2世」ではなく「宗教2世」であるとしても、問題意識の内容が明確でありさえすれば、必ずしも不用意な一般化にはならない。もし当事者の発信内容がその点で不十分だと第三者が思うなら、第三者が捕捉を発信すればいい。  特に今回は、「宗教2世ホットライン」内の文章が問題なのではなく、NHKという第三者によるドキュメンタリーの内容の問題だ。第三者が第三者の報道を批判するのは必要だが、当事者の発信部分にまで直接異を唱える必要はないように思う。  第三者は、当事者より広い視野でより客観的な議論をしやすい立場にある。しかし広い視野を目指す以上、その視野の中に当事者の主張や問題提起の意義も確実に含めるべきだ。  一方で当事者に、第三者から見て非の打ち所のないほどの視野の広さや客観性が必要だろうか。無理なくそれを備える事ができるなら越したことはないが、そうでなければ発信できない(発信すると批判される)となると、当事者はいつまで経っても存分に声を上げることができない。  だから鈴木氏が提起している議論も私自身がここで書き連ねた議論も、全て第三者にとっての課題なのだと思う。 <文/藤倉善郎>
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)
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