『
なぜ大麻で逮捕するのですか?』。そんなタイトルの電子書籍が昨年12月にKindleで自費出版された。
著者は舞台制作者で作家の長吉秀夫さん。これまで『
大麻入門』(幻冬舎新書)、『
大麻 禁じられた歴史と医療への未来』 (コスミック出版)といった著作で、大麻の歴史や医学的効能などの情報発信をしてきた。
長吉秀夫さん
長吉さんは、世界各国で大麻の規制緩和が進む中、日本の大麻取締法は罰則が厳しすぎるとしている。大麻の所持や栽培を非犯罪化することで、逮捕されることがないようにするべきだという。
今回の著作もそうした問題意識のもとで、識者のインタビューとコラムがまとめられている。取材対象者は、弁護士・亀石倫子さん、医師・正高佑志さん、ジャーナリスト・佐久間裕美子さんなど。大麻の話だけにとどまらない、さまざまな社会的観点から問題提起をしている。
なぜ、大麻で逮捕をするべきではないのか? 今導入が議論されている「使用罪」をどう見るか。長吉さんに話を聞いた。
――大麻を非犯罪化するべきだと考えるのはなぜでしょう?
長吉:主な理由は、刑罰が厳しすぎるからです。大麻取締法は、大麻による実害と科せられる刑罰のバランスが合っていません。
日本では大麻は非常に危ないものだというイメージがありますが、健康被害の大きい覚醒剤やヘロインなどとはまったく違うものです。イギリスのランセットという有名な医学雑誌に載った研究では、大麻はタバコやお酒よりも安全であるという結果が出ています。世界保健機関(WHO)も、大麻に含まれるカンナビノイドに重篤な害はなく、医療としての使用も可能であると明言しています。
ランセットに掲載された内容より
それにもかかわらず、所持の場合は5年以下の懲役という大変重い刑罰です。逮捕されると一般に会社勤めをしている人では、その後の社会的な生活に多大な影響があります。起訴するとしても、学校や会社には行かせて、土日などに捜査をするべきです。
――LINEに大麻使用を思わせる書き込みをしただけで逮捕をされた事例もあるそうですね。
長吉:昨年9月に関東に住む男女がLINEのオープンチャットで大麻を容認する書き込みをしたことで、愛知県警に逮捕されました。「久しぶりに吸えて感動してます」「やっぱWeed上手いーっ」などと書いていました。それだけで急に警察が来て、サイバー調査を強化していた愛知県警に連れて行かれてしまったのです。容疑は、麻薬特例法の「あおり・唆し」でした。
女性はうつ病や喘息などの持病があったため、医療用の目的で大麻を吸っていたそうです。それが突然逮捕をされて、長時間の移送をされた。取り調べを経て、勾留された。今は使用罪はないので、48時間以内に釈放されました。誤認逮捕と言っていいでしょう。
関東までの帰りの新幹線は自腹で払ったそうです。帰り道で友達から実名報道をされていると教えられて、真っ青になったとのことでした。実名で報道されたことで、その後の生活に大きな支障が生まれたことは明白です。警察はマスコミに48時間以内に情報を流しているわけです。この事件には警察やマスコミの体質の中にある、大きな問題が潜んでいると思います。