ロンドン再封鎖7週目。早くもロックダウン終了を打ちだした英国の出口戦略<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

春の気配を感じるロンドン

緩和策の発表からこっち本格的な春の訪れを予感させるようなお天気が続いています。浮かれるなといわれても難しいお日和。でも気温はまだ低いから普通の風邪に気をつけねば

ワクチン摂取の先の日程

 2月21日、待望のロックダウン終了プランが発表されました。まだまだ多くの人たちが新規に感染し、死者も相当数あります。病院の状況もかなり厳しいのが事実です。が、感染者はコンスタントに1万人を、死者も千人を切るようになりました。また、ワクチンの効果が確実に数字になって表れ始めています。英国に住む者にとって、そろそろ希望の光が必要なタイミングだったといって差し支えないでしょう。  政府案は、たぶんみなが予想していたよりも堅実で地道なものではありました。悪采配で支持率だだ下がりのジョンソン首相は「いまのを最後のロックダウンにします!」と何度も繰り返していました。これはそのためのプラン(*参照:BBC)であると。  一度目のロックダウン終了時の大雑把な――あるいは経済優先の、と言うべきか――タイムスケジュールに比べると今回はまことに微に入り細に入った計画となっています。専門家主導に舵を切らざるを得なかったのでしょう。すべては説明しきれないので、ガイドラインを追いながら日本人の興味を引きそうなポイントを搔い摘んで紹介していきましょう。  まず3月8日から学校授業の再開。運動や競技も許可されますからようやく校庭に賑やかな子供たちの声が帰ってきます。そして野外に限って同居人以外のひととも(むろんソーシャルディスタンスを守ってマスク着用の上で)立ち話がオッケーになります。  さらに、これこそ〝待ちに待った〟ケアホームへの定期的な訪問が一人限定とはいえできるようになりました。介護施設がクラスタ発生の温床であることに変わりはないので英断と申せましょう。70歳以上のお年寄りとワーカーへのワクチン接種がほぼ完了したからこそとはいえ。日本も検査こそ気軽に受けられるようになってきたみたいですが、老人が集団で暮らす場所への出入りはワクチンありきが常識だから。  3月29日には6人まで、または二家族の野外での交流が認められます。オープンエアの運動施設が解放され、近隣地域なら車や電車で移動してもかまわなくなります。いまのところ公共の交通機関を利用しないと行けないでいる魚屋やケーキ屋、パン屋、日本食材の店などを再訪できるのは、このへんからでしょうか。通販できるものもあるとはいえ待ち遠しい限りです。こっちは宅急便もないしなあ。

条件つきで動き出す社会

「野外で誰かと会える」ささやかな幸せ

「庭のミモザが満開だから一枝切ってってあげる」と近所に住む友人から電話。〝野外で誰かと会ってもかまわない〟ということは、こういう交流ができるようになるということ

 その次のステップは4月12日。不要不急以外のショップがようやくビジネスを始められるようになります。ジムや屋内プールも再スタート。ホテルなど宿泊施設を利用できるのもここから。おそらく細々とした条件はつくし、自己隔離の可能性もありますが海外からの客も想定しているでしょう。  というのも、このままの調子でいけば、4月の末までには50代以上のひとと基礎疾患のある人々、キーワーカー、対面販売に携わる労働者など感染リスクが高い人々への接種に決着がつきそうだからです。そうなればクラスタ発生の可能性がかなり低くなり、社会を大きく動かせるようになるという判断でしょうね。  それでも3月末にGoサインが出た6人以下二家族限定でのソーシャライジングを室内でやってもいいよーということになるのは5月15日。「密」になるのがいけないというより「密になってお喋りする」のが問題なんだな、やっぱり。飛沫ダメ絶対!  あまり指摘されないことですが日本語って普通に話している分には破裂音が少なくてあまり唾が飛ばない言語なんですよね。英語はイタリア語ほどでないにせよ唾ぺっぺ。存外そのへんにも日本でパンデミックが深刻にならなかった理由があるかも。ほら、東北地方はとりわけ僅かだったでしょ? 北の方言は美しい鼻濁音が多く言葉が散らないじゃないですか。言葉が散らなければウィルスも散らないってわけ。
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「6月21日」の出口の根拠
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