また、昨年11月から感染者数が下降していたことで、
2月から劇場や映画館、美術館などが再開したことも、影響しているかもしれない。
飲食は禁止、
席数は制限されているが、再開直後の週末に足を運ぶと人でごった返していた。
エンタメ業界にとっては明るいニュースかもしれないが、
感染者が急増し、再び閉鎖となれば元も子もない。事実、一部は再開したものの、
大手シネコンなどは休業したままだ。ある映画館チェーンの従業員は、苦しい胸中をこう明かす。
「日本でも同じでしょうが、
映画館は飲食の売り上げが頼みの綱。それが禁止されているうえに、席数も制限されているとなれば、ウチのようなシネコンは
大赤字です。
そもそも、
劇場公開される新作もほとんどないですし、開けるとなれば
宣伝や
人件費もかかる。それでようやく開いても、今の状況を見る限りではすぐに閉鎖される可能性が高い。
いま劇場を再開するのはリスクが大きすぎます」(30代・男性)
つかの間の息抜きが、かろうじて残っていた最後の灯を消し去ってしまうことにも繋がりかねない、というわけだ。
さらに厳しいのは
飲食店だ。テイクアウトやデリバリーこそ許されているものの、通常の営業が停止してからは、
すでに100日以上が過ぎている。そこに追い打ちをかけるのが
厳冬だ。現地の不動産業者は、その理由をこう話す。
「ポーランドでは
築100年以上ある建物はザラです。デリバリーなどでずっと稼働しているお店は別ですが、ロックダウンの間ずっと休業しているバーなどは、
寒さで水回りが痛んでいる可能性が高い。ようやく感染者が減って営業を再開しようと思ったら、
修繕費が払えなくて倒産……なんてケースも多いでしょうね。冬の間、
家賃を払い続けただけでも、かなりの負担ですから、それ以上は耐えられないというのも無理はないでしょう」
また、飲食店の休業や営業形態の余波は、
学生たちにも押し寄せている。
「いろいろなお店に
バイトの応募をしましたが、全滅でした。どこも
できるだけ人件費を抑えたいので、新しい店員を雇うどころか、リストラするお店がほとんど。同級生と話していても、みんな『
何か仕事はないか』と血眼になっています。ウーバーイーツか何か、デリバリーのバイトを探すしかなさそうですね……」(10代・男性)
気温や湿度が上昇し、ワクチンが開発されたことで、コロナショックも春には落ち着く……。そんな楽観ムードは、マスクを外したまま出歩く人々の姿にこそ見られるものの、現実はそう甘くない。
くれぐれも日本に住む読者の皆さんには、欧州の現状を反面教師として、油断せずに春を迎えていただきたい。
<取材・文・撮影/林 泰人>