日経新聞も短文ゆえに日本政府の言い分をほぼそのまま
<3例目:日本経済新聞>
さらに日経新聞を見ていこう。
「G7多国間主義へ転換、首脳声明 ワクチン支援7900億円」では、メインの本文では経済面の話が中心。オリンピックについての言及は表組みでまとめられた「G7首脳声明のポイント」という箇所で、”東京五輪:新型コロナに打ち勝つ世界の結束の証しとして開催する日本の決意を支持”という短文だけにとどまっていた。
この日本経済新聞の報道内容も、1例目のTBSや2例目のNHKと同様、「新型コロナに打ち勝つ世界の結束の証しとして開催する日本の決意を支持」と書いているが、繰り返し述べてきたようにG7が支持した決意は「
世界的な団結の象徴として安全・安心に五輪を開催すること」であり、ニュアンスが異なる。しかも、その内容を首脳声明のポイントとして大きく記載してしまっている。
<4例目:ロイター>
「G7首脳、声明で日本の決意支持 今夏の五輪開催」
”主要7カ国(G7)の首脳は19日に開いた会議後に声明を出し、今夏に東京五輪・パラリンピックを開催するとした日本の決意に支持を表明した。新型コロナウイルスの感染が世界的に収束しない中、約5カ月後に迫る五輪は開催に向けた不透明感がぬぐえないでいる。
英国が議長国の今回のG7首脳会議はテレビ電話で開催。菅義偉首相は、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして(今夏の五輪を)開催する」と従来の見解を改めて示した。
G7首脳はこれに呼応する形で「今年の夏に安全・安心な形で2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催するという日本の決意を支持する」との声明を出した。”
*上記のニュース内容は
REUTERS より引用(最終アクセス:2021/2/21 17:00)
ここまで国内メディアが続いたが、最後にイギリスに本拠を置く外国メディアであるロイターの報道内容を検証する。まず、最後の4段落目にて、G7が支持したのは「安全・安心な形で五輪を開催すること」と正確に報じている。日本政府の発表内容に引きずられた1〜3例目の国内メディアと異なり、首脳声明の原文に忠実だ。
また、国内メディアは決して書かなかった以下の2点も率直に書いており、外国メディアでありながら最も正確に日本のニュースを伝えているという皮肉な結果となった。
・五輪開催に向けた不透明感がぬぐえないこと(1段落目)
・菅総理は「人類がコロナに打ち勝った証として開催」という従来の見解を改めて示したこと(2段落目)
以上4社の報道内容の検証を踏まえると、日本政府が都合よく修正した大本営発表を国内メディアがそのまま垂れ流すことを続けていると、国内メディアから情報を得ている国民の認識は世界の認識と大きくかけ離れていってしまう。日本の正確な情報を知るには、外国メディアからの情報に頼らざるを得ないという本末転倒な状況が今後さらに加速してしまう恐れがある。
<文・図版作成/犬飼淳>
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いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身の
noteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。
noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(
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