英語が得意というわけではない筆者であっても、原文を確認すれば日本政府の発表は嘘であるとすぐに気づくことができた。しかし、多くの国内メディアは政府の嘘をそのまま垂れ流して報道し、多くの国民に「人類が新型コロナウイルス に打ち勝った証として五輪を開催するという日本の決意をG7が支持した」という誤った印象を与えてしまった。4社のニュース内容を具体的に確認しながら、問題と思われる箇所を指摘していきたい。
英文のG7決議声明との違和感が残るTBS、NHK報道
<1例目:TBS>
「菅首相は初参加、G7 五輪開催 日本の決意支持」
”G7=主要7か国の首脳会議が開かれ、菅総理が表明した東京オリンピック・パラリンピックの開催への決意を、G7全ての国が支持しました。
G7首脳会議はテレビ会議方式で開かれ、初めて出席した菅総理は、東京オリンピック・パラリンピックについて「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として、開催する決意を表明しました。この決意に対し、他の全ての国から支持があったということです。
「『安全安心の大会を実現したい』、そうしたことを私から発言し、G7首脳全員の支持を得ることができました。大変心強い、このように思っています」(菅義偉首相)”
*上記のニュース内容は
TBS NEWSより引用(最終アクセス:2021/2/21 17:00)
このTBSの報道内容を検証すると、見出しや1段落目で「五輪開催の決意をG7が支持した」と述べていることは事実であり、特に問題はない。だが、2段落目の「「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として、開催する決意を表明しました。この決意に対し、他の全ての国から支持があった」と述べていることはかなりニュアンスが異なる。前述した通り、G7が支持した決意は、「世界的な団結の象徴として安全・安心に五輪を開催すること」であり、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、五輪を開催すること」ではない。
<2例目:NHK>
「菅首相 東京五輪・パラ実現に“G7の首脳全員の支持を得た”」
”菅総理大臣は、G7=主要7か国の首脳によるオンライン形式の会議のあと記者団に対し「新型コロナ対策を中心に議論を行った。日本の感染状況や対策を発表し、評価を得ることができた。感染収束の決め手となるワクチンについて、公平な形で配分させることの重要性について議論し、その方向で一致した」と述べました。
また、東京オリンピック・パラリンピックについて「ことしの夏、人類がコロナとのたたかいに打ち勝った証しとして、安全・安心な大会を実現したいということを私から発言し、G7の首脳全員の支持を得ることができた。大変心強いと思う」と述べました。
(中略)
G7 首脳声明の内容
(中略)
新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証しとして、ことしの夏に安全・安心な形で、東京オリンピック・パラリンピックを開催するという日本の決意を支持するとしています。”
*上記のニュース内容は
NHK NEWS WEBより引用(最終アクセス:2021/2/21 17:00)
このNHKの報道内容を検証すると、1例目のTBSと全く同じ問題点を2段落目で指摘できることに加えて、致命的な問題点が最終段落にある。中略を挟んだ後にG7首脳声明の全文の日本語訳が掲載されているが、東京五輪について言及されている箇所が完全な誤訳になっている。冒頭で紹介した通り、英語の原文には「新型コロナウイルスに打ち勝つ証として開催」というニュアンスは1文字も書かれていないにもかかわらず、首脳声明の日本語訳として「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証しとして、ことしの夏に安全・安心な形で、東京オリンピック・パラリンピックを開催するという日本の決意を支持する」と書いてしまっている。