季節性第3波エピデミックの収束と新たな脅威の襲来。ワクチン戦略が遅れている日本が迎えるコロナ正念場

非季節性第四波エピデミックの発生

 今回は、前回に引き続き第三波エピデミックの定点観測第四回としてほぼ収束しつつある季節性第三波エピデミックSurgeの現状を述べました。  しかし、日韓共に日毎新規感染者数は、まだ高い水準で下げ止まり、反転上昇の兆候を見せています。  更に本邦では、死亡統計の新規感染者統計への遅行が異様に大きいこと、そして2月に入り遅行が拡大しているという謎を示しました。そして、日毎死亡者数は1日あたり70人台というたいへんに高い水準で下げ止まっており、最近ではむしろ上昇に転じています。  筆者は、前々回、前回と、第三波季節性エピデミックSurgeは3月末頃には収束すると予測してきましたが、一方で、感染力のたいへんに強い英国変異株の本邦への侵入と市中感染の拡大が見られ、制圧に失敗すれば2月中には英国変異株が支配的(Dominant)となり、非季節性第四波エピデミックSurgeとなることを指摘してきました。この場合、ワクチン接種の著しく遅れている本邦では、英国で11月中旬から12月に見られた巨大エピデミックSurgeを含めて警戒すべきと様々な場で警告してきています。  厚労省の公開する変異株情報を有志が見やすくスプレッドシートにまとめたものを筆者は毎日見ていますが、統計と合わせて各種報道を見る限り、、既に本邦では2月初旬から英国変異株を支配株(ドミナント)とした非季節性第四波エピデミックSurgeが始まっており、季節性第三波エピデミックSurgeを現在置き換えつつあると筆者は結論しています。  IHMEは、2/20更新の本邦COVID-19エピデミックの評価と予測において非季節性第四波エピデミックSurgeが既に支配的であると示し、筆者の考えと一致しています。
IHMEによる日本における真の日毎感染者数の推定と予測(2020/08/01-2021/06/01)

IHMEによる日本における真の日毎感染者数の推定と予測(2020/08/01-2021/06/01)これは実測値でなく推定値であり、感染発生日を示すために約14日統計に先行している。現在、英国変異株がドミナント(支配株)となっている。赤破線は、最悪 (英国変異株が猛威を振るう) シナリオ、紫破線は、現状シナリオ、緑破線は、全員マスク着用 (着用率95%)シナリオ。(出典:IHME

 英国変異株は、在来株に比して感染性が70〜100%高く、子供に感染しやすい*という特徴があり、毒性も在来株に比してやや強いとされています。合衆国と英国では、感染性の高さから英国変異株の倍加時間は9〜10日であり、短期間で感染のドミナント(支配株)となっています。現在既に合衆国もドミナントは英国変異株である可能性が高いです。 〈*在来株は、子供には感染しにくく、発症もしにくかったが、英国変異株は、子供に感染しやすく、発症・重症化もするとされる。このため英国では11月のティア3ロックダウンで運営し続けていた小学校がエピセンターとなり、子供達がウィルスの運び屋となり、子供の犠牲も発生した疑いがある。現在英国や合衆国では小学校などは閉鎖されている。大学は、週二回程度の高頻回全員PCR検査によってバブル(安全圏)を形成し、運営されている〉  英国変異株に対しては、第一世代COVID-19ワクチンの有効性は変わらないために、英国や合衆国と行ったワクチン先行国では統計にワクチンの効果が現れる可能性がIHMEにより指摘されていますが、本邦では、ワクチン接種は非季節性第四波エピデミックSurgeに間に合いません* 〈*ファイザーやモデルナといった第一世代COVID-19ワクチンは、ブースター接種をメーカー指定通り行った場合の免疫完成は、第一回接種から6〜8週間後とされる。最近では、不完全でも初回接種後には免疫が得られるという主張もあるが、新たなワクチン耐性変異株が生じる恐れもある〉  このため筆者の予測通りに英国変異株をドミナントとした非季節性第四波エピデミックSurgeが発生しているとすると、3月から4月にかけて本邦は、たいへんに厳しいことになると考えられます。  次回は、IHMEによる予測の推移を使い、非季節性第四波エピデミックSurgeの見込みについて論じます。  筆者による予測とIHMEによる予測が杞憂に終わることを心から望みます。 ◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ39:第三波エピデミック定点観測(4) <文/牧田寛>
Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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