季節性第3波エピデミックの収束と新たな脅威の襲来。ワクチン戦略が遅れている日本が迎えるコロナ正念場

日本~日毎死亡者数の挙動からわかる医療の危機的状況

 本邦は、日毎新規感染者数が1月中旬まで急速に増加し、謎々効果*が3月にも消滅してしまうことが予測されるほどにたいへんに先が危ぶまれる状況になりました。しかしこれは、一過性且つ社会活動を起因とするクリスマスと年末年始連休によるSpikeが原因であって1/21〜25に自然終息しています。一方で季節性の第三波エピデミックSurgeは、1月末には減衰しはじめ3月末までには収束する見込みでした。  しかし後述する様に日毎死亡数の挙動が下げ渋っており、医療への過負荷が収束しないこと、それどころか2月下旬に入ると日毎新規感染者数が僅かに増加へと転じつつあり、死亡者数も下げ止まってしまいました。これらは明らかに終息過程にあった季節性第三波エピデミックSurgeが悪い方向へ大きな変化を生じていること、新たなSurgeかSpikeの発生を示します。 〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる被害が他の地域、特に米欧に比してきわめて小さい。筆者はこの事実に2020年2月末頃に気がつき、同3月には「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ効果を”Factor X”と呼称している人たちもいる。米欧メディアや研究機関が注目するものの、謎々効果の原因も正体も不明であった。謎々効果の原因は依然不明だが、正体はこの領域では感染率が当初米欧の1/1000程度に抑えられていることである。致命率(CFR)は謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている〉  本邦では12/29に急減した移動傾向が、2月に入り漸増しています。但し、この程度の増加は、新規感染者数への大きな寄与は無いと思われます。花粉の季節ですのでマスクの着用率が高く、社会的距離に配慮し、屋内外食において社会的距離の確保と換気を徹底すれば、移動傾向の微増はCOVID-19統計にそれほど影響しないと筆者は考えています。そうではあっても、韓国に比して移動傾向の推移は1年を通して成績がたいへんに悪く、根本的な制作の見直しが必須です。例えジャブであっても積み重なれば致命傷になりかねません。
日本全体での移動傾向の推移(2020/01/13〜2021/02/19)

日本全体での移動傾向の推移(2020/01/13〜2021/02/19)(出典:Apple

韓国~新規感染者数は下げ止まり、油断を許さない状況

 韓国は、100万人あたりの日毎新規感染者数がクリスマス前までに本邦とほぼ同率になりましたが、韓国では、K防疫体制の二度にわたる強化と12/14以降のソウル首都圏域における大規模一般PCR検査の開始(首都圏域におけるクラスタ戦略の事実上の放棄)によってクリスマス前から減少が始まり、1月中旬まではたいへんに順調であって*筆者の予測では、3月末までの収束の見込みでした。しかし1月末に通産3回目の宗教団体起因の大規模Spikeが大田と光州で生じました**。韓国は、COVID-19対策が優秀な国の例に漏れず約二週間でこのSpikeを制圧しました。しかしそれ以降、韓国では日毎新規感染者数が下げ止まってしまいました。そしてここ数日は、増加に転じています。現在韓国の100万人あたりの日毎新規感染者数は、10ppmと昨年12月冒頭並みであり、全く油断を許さない状態です。 〈*韓国、大衆利用施設の集団感染が大幅に減少…距離措置の効果 2021/01/16 hankyoreh japan〉 〈**韓国で宗教団体関連施設発の集団感染、少なくとも341人…第3波再拡散の岐路 2021/01/28 hankyoreh japan〉  なお韓国のお正月は、旧正月(ソルラル)ですが、移動傾向は若干増加したものの大きな影響は無いものと考えられます。旧正月の影響は、2月末に現れるため、日毎新規感染者数などの統計の動きには注意を要します。
韓国全体での移動傾向の推移(2020/01/13〜2021/02/19)

韓国全体での移動傾向の推移(2020/01/13〜2021/02/19)(出典:Apple

台湾~新規感染者0の日もあり優秀

 台湾では、昨年12月以降、国内市中感染者が月あたり数人程度発生していますが、それに応じて国内市中でのPCR検査数を大きく増やし、市中感染者1人を見つけるために数千人のPCR検査を行うというCOVID-19対策では掃討期に行われる優れた対応によって封じ込めに成功しています。台湾では、1/30と2/4にCOVID-19による死者が合計2名発生し、累計死亡数は9名ですが、これは1億人あたり38人に相当し、本邦の1/160*です。 〈*本邦のCOVID-19統計は漏れや過小評価などのメイキングが極めて多く、実際には台湾の死亡率は本邦の1/200以下と考えられる〉  心配された2/12の旧正月(春節)でも、移動傾向は低く抑えられました。春節の影響は、2月末に統計に現れますが、現時点で問題は生じていません。台湾では空港検疫で1名、国内0名という日が続いていますが、空港検疫を含む新規感染者数0名の日が時々見られる様になってきました。台湾の防疫体制は完璧に機能していると言えます。
台湾全体での移動傾向の推移(2020/01/13〜2021/02/19)

台湾全体での移動傾向の推移(2020/01/13〜2021/02/19) 移動傾向が大きく増加している日があるが、増加したのは自家用車である(出典:Apple

空港検疫、国内共に新規感染者数0を祝う総柴(ゾンチャイ)2021/02/21 中華民国衛生福利部(台湾厚生省)Tweet
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韓国並みの防疫ができていれば9月以降の日本の死者は半数に抑えられた
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