サンクチュアリ協会系との合同デモでこのシュプレヒコールというのは、
なかなかのチャレンジだ。
2012年.統一教会の教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が死去すると、
統一教会内に後継者争いが起こった。そこで分派したのが
サンクチュアリ協会で、文鮮明(=故人)氏の7男・亨進(ヒョンジン)氏を直接の指導者としている。亨進氏は米国時間の今年1月6日に連邦議会前で行われたトランプ支持者たちの集会にも現地で参加している。
一方の幸福の科学は文鮮明氏が存命中だった2010年、その守護霊の言葉であると称して大川総裁が語る霊言を映像で収録し、全国の教団施設で上映したり書籍化して販売したりした。文鮮明氏の守護霊を地獄に住む蜘蛛であるかのように扱う内容で、当時、統一教会が幸福の科学に抗議書を送付する騒ぎとなった。
文鮮明氏存命中のことであり、サンクチュアリ協会が分派する前の出来事だ。
サンクチュアリ協会の信者や同協会が関わる政治団体関係者がこのデモで実際に「ウィズ・セイビア!」と叫んだかどうかは定かではないが、少なくとも主催者はお構いなしに叫ばせようとした。
過去の因縁を乗り越えての大同団結という、実に清々しい光景だった。
1月6日のデモ終了後には、銀座・数寄屋橋交差点前で街宣が行われた。前出の与国氏を代表とする政治団体「武士道」の街宣車を使い、与国氏のほか、これまた前出の及川氏、古山氏といった幸福の科学関係者が挨拶や演説を行う。
これは、それ以前に行われていた幸福の科学系のトランプ応援デモと同じ光景だ。
ただしこの日のデモには、別勢力である「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」も共催として加わっている。デモ後の街宣の顔ぶれも、それを反映していた。
登壇順に並べると、
幸福実現党外務局長・及川幸久氏
日本再興プランナー・浅香豊氏
日米同盟強化有志連合、トランプ大統領を支援する会・松岡ユウコ氏
日本沖縄政策研究フォーラム理事長・仲村覚氏
トランプ・サポーター・イン・ジャパン顧問(安田建設社長)・安田永一氏
幸福の科学職員・与国秀行氏
トランプ・サポーター・イン・ジャパン代表・古山貴朗氏
及川、与国、古山3氏はすでに述べた通り幸福の科学関係者。
安田氏は幸福実現党関係者の事務所開きの場で、自身は
2016年入信の幸福の科学信者であると明かしている。
安田氏は入信前の2013年にはすでに、幸福の科学系団体「
論破プロジェクト」の「株式会社安田建設」として後援と協賛の両方を行っている。「論破プロジェクト」は、2014年にフランス「アングレーム国際漫画祭」に「従軍慰安婦は捏造」とする主張を引っさげてマンガ作品を出展しようとして、主催者から拒否されるなどの騒ぎを起こした団体だ。代表者の藤井実彦氏も幸福の科学信者。つまり安田氏は、幸福の科学入信前から、幸福の科学関係者の政治活動に賛同し、自身が社長を務める会社ぐるみで支援してきた人物である。
仲村覚氏は、沖縄の実家が幸福の科学の布教所となっていたこともある信者。元信者の証言などによれば、母親も信者で、2012年に日本会議事業センターから
椛島有三氏(日本会議事務総長、日本青年協議会)と共著『祖国復帰は沖縄の誇り』(明成社)を出版。日本会議による2011年の「沖縄県祖国復帰39周年記念大会」や翌年の40周年記念大会で講話を行っている。幸福の科学理事長を務めたこともある神武桜子氏は覚氏の姪とされる。
仲村氏自身は2015年に幸福の科学を脱会したと主張しているようだが、真偽は定かではない。一方、今回こうして幸福の科学関係者が主催するデモ後の街宣に登壇したことで、今なお信者たちと交流があり、少なくとも政治活動を共にする程度に近い立場にあることがうかがえる。
登壇者7人のうち5人が幸福の科学関係者もしくは近い人物。そして残り2人のうち
浅香豊氏は『
左翼を心の底から懺悔させる本』(NextPublishing Authors Press)の著書もある保守寄りの人物。
松岡ユウコ氏は前述のように、所属するトランプ大統領を支援する会等が統一教会分派の
サンクチュアリ協会と関わりがあり、同協会の地方支部教会には松岡氏と同姓同名の人物もいる。
デモ後の街宣でも、幸福の科学系、サンクチュアリ協会系、その他の保守系といった各方面の人物が揃い踏み。しかも全員が、顔出し・名前出しで(サンクチュアリ協会の名前だけは公言されなかったが)、名実ともに共闘した形だ。
街宣でのスピーチ内容を逐一紹介するのは、今回は省く。米大統領選挙に不正があったとする主張のほか、日本にとっての中国の脅威等に言及し中国共産党を批判する内容もあった。街宣前のデモでも「Take down CCP」(中国共産党を倒せ)というシュプレヒコールが叫ばれていたことからも、中国共産党批判を強く意識した、あるいはそれ自体が本来の目的であるデモと街宣に見えた。
次回、日本におけるこのトランプ応援運動が何を意味し、我々が何を警戒すべきなのかについて考えたい。
<取材・文・写真・図版作成/藤倉善郎>