コロナに感染して見えた政治課題<立憲民主党衆議院議員 小川淳也>

防護タクシー

札幌市内の防護タクシー。ただ、このような取り組み、従事者へのバックアップなどが圧倒的に不足している(時事通信社)

感染したからこそわかった6つの問題点

―― 小川さんは昨年11月に新型コロナウイルスに感染しました。どういう経験でしたか。 小川淳也氏(以下、小川) コロナ感染は本当に大変でした。実際になってみないと分からないところが多くありましたが、自分自身の経験を通じて政治の課題も見えてきました。  私は昨年11月16日に上京して厚労大臣など政府関係者と面会した後、夕方から発熱して深夜には39度まで上がりました。17日の朝、近所のクリニックにPCR検査を頼みましたが、「発熱時の検査はできない」と断られました。患者の立場としては発熱時こそ検査してほしいわけですが、民間医療施設の多くは発熱時の検査に対応していない。これが第一の問題点です。  仕方なく一私人として都の相談センターに電話したところ、発熱時対応の検査機関を紹介されました。ただ検査機関は非公表なので、事前に準備ができない。これが第二の問題点です。  また、紹介された検査機関は一番近いところでも1キロ離れていました。しかし公共交通機関は使えない、タクシーは憚られる、家族や秘書にも頼りづらい。結局、39度の熱を抱えながら徒歩で行きました。患者は陽性が確定したら保健所の管理下に入りますが、そこまでは検査も含めてすべて自助努力なのです。幸い私は都心にいたから何とか自力でたどり着けましたが、郊外や地方だったらどうだったか。防護タクシーなど移動支援に取り組む必要がある。これが第三の問題点です。  そして検査機関で陽性が確定、その日のうちに保健所の防護車両で都内の病院に入院しました。その間、濃厚接触者のヒアリングがありました。高熱で身体が一番きつい状態で「どこで誰と会ったか」という問いに答えるのは、非常に大変な作業でした。濃厚接触者の定義は「発症2日前からマスクをつけずに会った人物」です。逆に言うと、「マスクをつけて会った人物」は当てはまらない。また、濃厚接触者は公費で検査をうけられますが、それ以外の接触者はうけられません。私の場合、濃厚接触者は十数人で、幸い陽性者はいませんでした。しかしそれ以外の数十人の接触者は公費検査がうけられず、自費検査に追い込まれてしまいました。つまり濃厚接触者の範囲が狭すぎるのです。これが第四の問題点です。  18日は一通り検査を行い、「軽症」と判断されました。しかし自覚症状は非常にきつい。世の中で言われている「軽症」という言葉と、実際に自分が感じる症状の重さの間に大きなギャップがあると感じました。  同時に、医師からは「呼吸器につなぐような症状が起きない限り投薬はない」と説明されました。この点について後日厚労省に確認したところ、「レムデシビルなどコロナの治療薬は輸入薬が多いが、世界的な治療薬の分配状況を明らかにすることはできないため、国内の投薬状況は公表していない」と説明されました。つまり厚労省が投薬状況を公表していないため、全体状況が分からないのです。しかし患者の立場からすれば、自分が投薬をうけられるかどうかが分からないというのは非常に大きな不安材料です。これが第五の問題点です。  19日には一度37度まで下熱しましたが、その後も発熱を繰り返しました。結局、11日間の入院期間で3回の発熱を繰り返したのですが、この間、看護師さんは治療の傍ら、部屋の清掃、シーツの取り換え、ゴミ出し、買い出しなど、あらゆることをやっていました。私も体調が回復し始めてからは手伝いましたが、明らかに看護師の過重負担です。これが第六の問題点です。  おかげさまで27日に退院、2週間の自宅療養を経て社会復帰を果たしました。自分が与党にいれば、あるいは厚労大臣であれば、直ちにこれら政治の課題に着手できるのですが、それができない。そこが野党議員の辛いところで、忸怩たる思いがありますが、まずは国会質疑等を通じて自分の経験を伝え、政策の改善につなげることがコロナサバイバーとしての責任だと考えています。

被害を拡大させた安倍・菅政権

―― 小川さんは1月25日、衆院予算委員会で質問に立ち、自身の経験に基づく問題提起を行いました。 小川 私は発熱の前に田村厚労大臣と面会していました。そのこと自体は非常に申し訳なく、お詫びしたいと申し上げた上で、田村大臣がPCR検査をうけたかどうかを質問しました。今回の場合、田村大臣は濃厚接触者ではありませんが、接触者ではありました。そのため、田村大臣が検査をうけたかどうかは、濃厚接触者の範囲が適正かどうかという問題に直結するのです。  仮に濃厚接触者に当たらない田村大臣が公費で検査をうけたならば、自ら定めたルールに違反することになります。自費でうけたならば、濃厚接触者の範囲が狭いという検査政策の不備を自ら認めることになります。一方、検査をうけていないならば、ルールは守っていますが、危機管理上の問題があります。いずれにせよ、濃厚接触者の範囲が狭いという問題点は明らかです。  ところが、田村大臣は個人情報を理由に回答を拒みました。迷惑をかけた私が申し上げるのは甚だ心苦しいのですが、「個人情報だからノーコメント」で済む話か。田村大臣は検査政策の責任者です。厚労大臣として自分自身が当事者になった時にどう対応したかを説明する責任があるはずだ。自らの説明を通じて、現在の検査政策が適正だったならばそれを証明し、不備があったならば反省点・改善策を提示すべきだと、今でも思っています。 ―― PCR検査が広がらない背景には、医系技官など厚労官僚の問題があるとも指摘されています。 小川 そもそも日本の感染症対策は「結核対策」が基本モデルになっています。だから厚労省は初期段階で、結核対策に則ってクラスター潰しと接触者の追跡を行ったのです。ところが、途中からコロナ感染では無症状者がいると判明し、経路不明の市中感染が拡大していった。本来ならば、この時点で政策を転換してPCR検査を徹底し、無症状者を発見・隔離すべきでした。  しかし政府は無症状者を放置したまま、相も変わらずクラスターを潰しながら接触者を追い続けた。その結果、徒に被害が拡大して死者が増えてしまったと思います。  これは官僚ではなく政治家の責任です。官僚や専門家の役割は自らの専門性にもとづいて判断、提言することです。それを踏まえた上で、国家として総合的な判断、賢明な決断を下すのが政治家の役割です。今回の失敗も、最終的には一身を賭す覚悟で政策転換を決断できなかった安倍・菅政権の責任に帰着します。政策判断を決定的に誤った安倍・菅政権の責任は極めて大きい。  コロナとの戦いは、これまでは無症状者への徹底検査のフェーズでしたが、これからはワクチンの徹底接種のフェーズに移ります。しかしPCR検査を徹底できなかった政府に、ワクチン接種が徹底できるのか。政府の対応をしっかりと見極めていきたいと思います。
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政府与党は国民と運命を共にしていない
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月刊日本2021年3月号

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