母国が政情不安のため、群馬県に1年以上滞在する南スーダンの選手たち。無事に出場することはできるのか 写真/時事通信社
一方、海外から選手が来るのか否かはっきりしないなか、気をもんでいるのがホストタウンだ。
「来るという前提で調整しているが、いつ来るか未定です」(リトアニアの選手を受け入れる神奈川県平塚市・オリンピック・パラリンピック推進課)
「具体的な話は何もありません」(アメリカ、ボツワナ、ペルーの選手を受け入れる千葉県佐倉市・地域創生課)
ルワンダの選手を受け入れる岩手県八幡市役所の担当者は言う。
「7月上旬からの直前合宿受け入れが決まっていますが、ルワンダは感染拡大でロックダウンになってしまった。出発前にワクチン接種をしてもらえれば多少、リスクが回避できると思いますがなかなか難しい。岩手も都会ではないので、選手がPCR検査をできる万全の体制をつくるのは難しい」
各地のホストタウンは、受け入れ準備・調整に加え、地元住民からは感染リスクを警戒する声もあり、対応に苦慮しているようだ。
果たして選手は日本に来るのか。東京五輪組織委員会に各国選手の来日予定について訪ねたが、期日までに回答はなかった。
今後、選手や参加国の減少にますます拍車がかかるかもしれない。北京五輪(’08年)の取材経験のあるスポーツライターは言う。
「五輪開催の7月、南半球ではちょうど冬です。昨年も7~9月に南半球のブラジルやオーストラリアで感染が拡大したので、今年も同じ状況になるでしょう。そうなると、南半球の選手は一層、来日しにくくなる。
また最大規模の選手団を派遣するアメリカの動向も注視しないといけません。先日、バイデン大統領も『開催は科学に基づくべき』とIOCの開催強行姿勢に釘を刺しました」
果たしてアメリカの選手団派遣中止はあり得るのか。アメリカ政治に詳しい明治大学教授・海野素央氏は言う。
「バイデン氏は、『オリンピックを政治主導で開催してはいけない』という考えの持ち主で、政治家の都合でやるべきではなく、科学的に安全な基準をクリアすることが大切と考えています。だから、安全基準がクリアされなければ、選手団派遣は難しいかもしれません。
ビジネス優先のトランプ氏だったら、放映権を持つ米NBCのことを考えて五輪開催を積極的に後押しした可能性がありますが、バイデン氏はビジネスよりも国民の安全を第一に考えている共感・協調の大統領です。一方で、先日の発言では含みをもたせており、同盟国である日本の立場も気遣っているようにも見えます」