橋下元府知事らが中心となって凍結した「大戸川ダム建設」が復活の兆し
今本博健・京都大学名誉教授
河川工学者として有名な今本博健・京都大学名誉教授が、「大戸川ダム」(滋賀県大津市)に関する意見書を2月1日付で吉村洋文・大阪府知事に提出した。維新“創業者”である橋下徹・元知事ら当時の4府県知事(大阪・京都・滋賀・三重)が2008年11月に凍結させた「大戸川ダムの建設」が復活しようとしているためだ。
かつて、この問題に関して橋下氏が口にしたのが「ぼったくりバー」発言だった。国の「直轄事業」が十分な説明抜きで地方自治体に押しつけられて「地方分担金」を払わされる“不明朗会計”の実態を分かりやすく表現したものだ。その顕著な例が、国交省の大戸川ダム計画だった。
そして当時の維新を牽引していた橋下氏は「税金のムダ撲滅」を主要政策として、脱ダム派首長の嘉田由紀子・前滋賀知事(現・参院議員)らとともに大戸川ダム凍結を求める共同見解を発表。翌2009年に国の凍結決定に追い込む成果をあげたのだ。
三日月滋賀県知事に続き、吉村大阪府知事もダム推進知事に“転向”!?
吉村洋文・大阪府知事
しかし「ダム建設をめぐる政・官・業のトライアングル」(自民党・国交省・建設業者のこと。嘉田氏による表現)はダム建設を諦めなかった。2期8年の嘉田県政継承を訴えて2014年7月に当選した三日月大造・滋賀県知事が、ダム推進の自民党県議団(最大会派)の要請に押される形でダム推進に方針変更したのだ。
2期目の知事選では、三日月知事は対抗馬を擁立しなかった自民党から支援を受けた。「大戸川ダム推進が、自民に支援してもらうための交換条件だったのではないか」という疑問の声が出たのは当然のことだった。
ダム建設凍結に尽力した嘉田前知事が後継指名をして支援したはずが、ダム推進派に“転向”した三日月知事。それと重なり合うのが、政界引退をした橋下元知事(元大阪市長)に代わって維新の顔となった吉村知事だ。
「十分な治水効果を確認できた」と結論づけた「大阪府河川整備審議会」から1月29日に答申を受けた吉村知事は「府民の命や財産を守る大きな効果があるのであれば前向きに検討したい」と条件つき推進の考えを明らかにしたのだ。