菅首相も「お粗末」と陳謝したCOCOA不具合。しかし、問題の本質はアプリではなく厚労省の「お粗末さ」にあり

厚労省

Mugimaki / PIXTA(ピクスタ)

菅総理の口から出た「お粗末」という言葉

 2月4日の衆院予算委委員会。質問に立った立憲民主党・玄葉光一郎議員の口調は、極めて穏やかなものだった。言葉遣いも極めて穏当。しかし、そのロジックに隙はない。玄葉議員は理知的に、昨年9月から4ヶ月以上にわたって機能していなかったというアンドロイド版COCOAの不具合について政府を問い詰めていく。そして最後に「失礼ですが、やはり、お粗末ではないですか?」と総理に問うた。  菅義偉総理の答弁は、こうだ。 「失礼じゃなくて、やはりお粗末なことだった。二度とこうしたことがないように緊張感をもって対応したい」  内閣総理大臣が国会答弁で、政府の失策に関してここまで素直に陳謝するのは近年稀だ。その驚きもあってか、あるいは「お粗末」との印象深い言葉のせいか、この答弁以降、堰を切ったように「アンドロイド版COCOAの不具合」を検証もしくは批判する記事が溢れた。

問題の本質は「アプリ」レベルなのか?

 当取材班がN日に公開した前稿も、あるいは読者にその一つであると受け取られたのかもしれない。  だが、取材班の問題意識は、「アンドロイド版COCOAの不具合」にあるのではない。いやむしろ、「アンドロイド版COCOAの不具合は確かに『お粗末』ではあるが、本当に『お粗末』なのはアプリレベルにあるのではない。プロジェクト全体が、いや、厚労省の発注行為全体が、『お粗末』なのだ」という点にこそ、当取材班の問題意識はある。前稿で「アンドロイド版のみならずiPhone版についても、『そもそも全く使い物になっていない』という可能性が濃厚だ」と、COCOA全体が機能不全に陥っていた可能性を示唆したのも、この問題意識に根ざしている。 「アンドロイド版COCOAの不具合」は確かに問題だろう。この不具合に関してはさまざまな検証が加えられている。例えば、楠正憲氏の一連のツイートなどは、なぜこの「不具合」が発生したのかが詳細に解説されており、大変参考になる。  楠氏の指摘する、EN APIの仕様上の問題や、Apple・Googleそれぞれのポリシーや仕様の違いなどの技術的な問題点、政府調達特有の意思疎通の難しさなどの制度的な問題点は、それぞれ今後の再発防止に向けて、真剣な反省と検証が必要なポイントであることに間違いはない。  しかし同時に、これらの問題点はあくまでも戦術面の問題点であることに注意が必要だ。
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問題の本質は厚労省の絵図自体なのではないのか?
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