「観光立国」の落とし穴。「観光客のいない2度目の夏」が来たら本当にヤバいスペイン経済

スペイン

Michal Jarmoluk Pixabay

「観光客のいない2度目の夏」

 スペイン最大のホテルグループメリア(Melia)の社長ガブリエル・エスカレールが1月28日、ワクチン接種の遅れとコロナ禍による感染度合いが好転しない現状を見て、今夏も昨年と同じように外国からの観光客の訪問が期待できなくなる可能性のあることを懸念して「観光客のいない2回目の夏を迎えるような事態になればスペインはそれに耐えることはできなくなる」とツイートした。  メリアは世界でも屈指のホテルチェーンであり、仮に今夏外国からの観光客が戻って来なくても資金的に耐える能力はある。しかし、スペインの中小の多くのホテルにとって昨年と同様に今夏も観光客が例年の8割減少というような事態になれば廃業を余儀なくさせらるのは必至である。ところが、その可能性が次第に高まっているということだ。

スペイン観光業界の「お得意様」、イギリスの事情

 この不安に追い打ちを掛けるかのような事態も起きた。  英国のワクチン相ナディム・ザハウィがスカイニューズで英国市民は夏のバケーション予約をまだ待つべきかという質問に答えて、彼は「まだ早すぎると思う。Covidで入院している患者がまだこの時期3万7000人もいる。夏のことについて期待感をもって思案するのはまだ早すぎると思う」と回答したのである。  彼はそれについて規制があると指摘しているわけではない。そうかといって自由に休暇を愉しめるという判断は時期尚早だとして、その決定にはまだ慎重であるべきだと示唆したのである。(参照:「El Pais」)  彼のこの回答はスペインの観光業界にとってはさらに不安を掻き立てるのに十分なものとなっている。  今年のイースターでの観光客の訪問はもう時期的に期待できない。となると、今夏が唯一の生き残りのための期待となっているのである。スペインに年間で8300万人の外国からの観光客が訪れのであるが、その内におよそ1900万人が英国からの訪問客となっている。そしてドイツとフランスを加えてスペイン観光客の3本柱を形成している。  その意味で英国からの観光客の訪問が今夏も昨年同様に期待できないとなると、スペインの観光業界は深刻な打撃を受けることになる。
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次々と出てくる不安要素
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