それに輪をかけるかのようにドイツの内務相ホルスト・ゼーホーファーがドイツ政府は国際便のフライトを殆どゼロ近くにすることを検討しているという声明を発表した。これは現在ヨーロッパを席捲しているコロナ禍の感染を抑える意味での発言であって、それが今夏まで継続されるとは思われない。しかし、それが今夏まで延長されないという保障はないということで、この発言もスペインの観光業者を不安にさせている。(参照:「
El Pais」)
更に、サンチェス首相が1月19日に発言したことがまた観光業界に不安を招く要因となっている。
彼はCovid-19のワクチン接種が対象となる国民の70%まで行き渡った時点で外国からの観光客を積極的に受け入れることができるようになるとした上で、その割合に達成するのが
8月末になると示唆したのである。8月末ということは夏の観光シーズンのピークを過ぎた時点ということになる。(参照:「
La Razon」)
ワクチンが不足している現況から推断して、恐らく8月末になっても予定の70%に達しない可能性も十分にある。ということでか彼の発言から今夏も昨年と同様に外国からの観光客の訪問が期待できなくなる可能性は十分にあるということなのである。
スペインのGDPの12%を担っている観光業の落ち込みもあって昨年は62万2600人の雇用が喪失されたことが1月25日にメディアで一斉に発表された。それはスペインの失業率を16.13%まで押し上げたことになった。
しかし、この政府が発表した数字はまやかしものだという話も浮上している。と言うのも、この失業率を割り出した失業者数は371万9800人ということになっているのだが、ここに一つ落とし穴があるのだ。それは「休職補償を貰っている人がまだ52万8200人いる」ということである。それに失業手当もなくなっている長期失業者が93万3600人いるということだ。
この2つのグループを先程の失業者数に加えてみよう「3,719,800+528,200+933,600=518万1600人というのが実質失業者ということなのである。政府はそれを隠している。
特に、休職補償を受けている人を政府は失業者としていない。ということから
実質の失業率は21.59%であって16.13%ではないということだ。
更に、政府は昨年新たに雇用が16万7400人創出されたとしているが、その内の12万5800人は公務員の雇用増加であるということ。新たに企業による職場の創出ではないということで生産力を高める雇用の創出ではないということだ。(参照:「
Libre Mercado」、「
El Pais」)
このような厳しい現状になったのも一番の要因はスペインがサービス産業で成り立っている国だからである。そのサービス産業の大半が観光業によるものだということ。
その観光業が今夏も期待できないとなるとスペイン経済は非常に厳しい経済を抱えることになる。それを回避するためにもワクチン接種のスピードを上げねばならないのであるが、現在EU加盟国内では期待を裏切る展開の遅さである。
<文/白石和幸>