メキシコ巨大カルテルシナロアが、大ボスがアメリカで収監され不在でも分裂しないワケ
ライバルのハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンがエル・チャポの息子らを誘拐した時もエル・マーヨの仲介で同カルテルのリーダーエル・メンチョは彼らを一切傷つけることなく釈放している。というのも、エル・メンチョもエル・マーヨには敬意を払っているからだ。誘拐した理由はエル・メンチョの息子がDEAに逮捕されたのもエル・チャポがDEAに彼の居場所を知らせたからだとエル・メンチョは理解していたからその復讐にエル・チャポの息子らを誘拐したのであった。
またエル・マーヨのことを良く研究して一冊の本にしているジャーナリストのアナベル・エルナンデスはカルテルの仲間の間でもエル・マーヨは敬意を払われていることを語り、麻薬市場において価格や販売ルートやその品質などのカルテル同士の間での調整を仕切っているのがエル・マーヨであると指摘している。だから、イタリアの最大のマフィアのひとつンドランゲタや他のマフィアがエル・マーヨのお墨付きをもらうことを必要としているという。というのは彼がカルテルの中で誰を信頼してよいか信頼してはいけないか、だれを殺さねばならないかといったことをエル・マーヨが助言することができるからである、とエルナンデスは『SinEmbargo』(2020年1月28日付)で語っている。
彼女によると、エル・マーヨはこの半世紀の間メキシコ及び世界で麻薬密売組織の宗主的存在として君臨してきたと語っている。だから彼にとってはシナロアでリーダーのエル・チャポがいなくなってもエル・マーヨにとっては全く困らないということなのである。
メキシコの2大カルテルはエル・マーヨにしろ、病気のエル・メンチョにしろ後継者をできるだけ早く決めておく必要がある。しかし、後継者選びは容易ではない。だから、この二人が死んだ後のこの2大カルテルは分裂して行く可能性もある。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身