イスラエル・ベエルシェバのワクチンステーション。photo by Olga Mukashev / Shutterstock.com
世界的に新型コロナウィルス感染の第三波と見られる流れが拡大している中、昨年12月8日、欧米諸国としては初めてイギリスで新型コロナウィルスのワクチン接種が開始された。
この時点での各国は、初のワクチン生産国である米国をはじめ、EU、イギリス、日本など殆どの先進国では人口の3倍以上のワクチン契約を確保していた。
一方、一部途上国では中国やロシアで開発されたワクチンの接種が開始されている。これらのワクチンは臨床試験の進め方やまたデータの公開の条件が異なっており、安全性、有効性について疑問視する声が多いことから先進国での投入例は少ない。
この頃、隣の韓国では海外のワクチン接種が次々と報じられ確認したところ、人口の半分に満たさない3000万回数しか確保していないことが分かった。
しかも、まだどの国からも承認を得ていなかった1社との契約のみであることも分かり、国民に不安が広がった。
そのような中12月20日、丁世均総理はテレビインタビューで「国内の防疫体制が優れていたので副作用や費用のリスクのあるワクチンには関心が少なかった」という見方を示した。
韓国内の報道を見る限り、文在寅政権は当初、国産ワクチンの開発にこだわっていたようで、昨年度4月に行われた総選挙での与党大勝利の要となった国内防疫体制を「K防疫」と名付けたように、「Kワクチン」を作りたかったようだ。
実際に韓国では感染拡大とともにソーシャル・ディスタンシングも強化されていた。
飲食店の休業が罰則付きの行政命令として発令され、5人以上が集まった場合、それを密告した人への褒賞も始められた。
市民に対してはこうした強気の対策を打つ一方で、ワクチン確保は滞っていた現状への不満が高まる中、韓国政府はこの2ヶ月間、ワクチン確保に命運をかけていたとも言える。
12月29日、青瓦台は文大統領とモデルナCEOとのテレビ会議の様子を写真公開し「モデルナと4000万ドーズの契約に(口頭)合意した」と発表。これはモデルナ社のプレスリリースより1日も早く、その必死さが窺える。
結果として韓国は現在複数のグローバル製薬メーカーと7000万人分のワクチン契約に至っている。
さて、今後ワクチンの国内搬入が始まると韓国の接種はどのように進むだろうか。未来を予測することはできないが、非常に早いペースで行われる可能性が高い。
昨年末からワクチン接種が開始されているイスラエルでは1ヶ月のうち、人口30%の230万人が接種を終えている。米英仏などの国でのワクチン供給や保存管理の行政上の乱れを考えると、これは驚異的なスピードである。
決め手となったのは
国民皆保険の個人識別番号と、中央政府による統制の効いた供給とデジタル化であると報じられている。
これらの条件は韓国も同様である。
すでに韓国は20年の2月から住民登録番号や携帯電話、クレジットカード履歴を利用し、感染者が訪れた場所周辺にいた人らやPCR検査対象者の追跡、感染者の動線公開に活用していた。中国と同様、こうした識別番号はワクチン接種にも利用されるだろう。
日本政府も、中央管理と識別番号の効果の確実性を活用する意欲を見せている。
1月25日、河野太郎ワクチン大臣は「ワクチン接種の数をリアルタイムで把握するため」マイナンバーを活用する意向を表明した。河野氏は以前からシンガポールなどを例として国民情報のデジタル化に意欲をみせていた。
しかしながら、ここには少し疑問が残る。
ワクチンの接種の数をリアルタイムで把握するなら、接種施設からの「何人に打った」という情報で十分であり、「誰が打った」まで国が知る必要はない。
また中国を除けば、いずれの国も徴兵制を運用しているので、個人の健康データを中央管理する名目がもともと存在している。
日本の状況において、
ワクチン接種進捗のため、個人識別番号を国が管理する必然性はあるだろうか。