プロ野球・楽天に8年ぶりの復帰が決まり、入団会見する田中将大投手(時事通信社)
田中将大投手の東北楽天ゴールデンイーグルスへの入団会見が行われ、YouTubeなどで中継された。田中投手の会見内容をみると、動作のひとつひとつ、フレーズの一言一言に、高いレベルのスキルが発揮されていることがわかる。
まずは、
アイコンタクトを外す方向だ。ほぼ1フレーズを話すごとに、小刻みに
小さくうなずくように下へ視線を向けている。文節でうなずくように下へアイコンタクトを外すと、
聞き手を話に引き込みやすい。
こうしたスキルは田中投手が話しているときだけでなく、質問を聞いているときにも発揮されている。
記者の話の
フレーズの区切りに合わせて、うなずいているのだ。これは、
相手に話を促す聞き方の基本だ。きっと会見に出席した記者も、田中投手のアイコンタクトやうなずきのリズムに乗せらせて、気持ちよく、話しやすいと感じていたに違いない。
時折、
視線を上へ向けることもある。「
パ・リ―グで特に対戦を楽しみにしているバッターがいれば教えてください」という質問には、大きく視線を上へ向けた。
こういったアイコンタクトの外し方は、まさに
その場で思い出しながら話している、相手の
質問に対して真面目に考えているという印象を与えやすい。それらが効果的に繰り出されて、聞き手を引き込んでいるように思えた。
アイコンタクトに関しては、
外す速度の緩急も注目に値する。
小刻みなこともあれば、ときには
ゆったりとうなずくようなアイコンタクトの外し方もしている。会見の冒頭や終了時、元読売ジャイアンツの
槇原寛己氏が質問した際には、礼をしながら上半身を駆使した外し方をしている。
話し方が単調に陥ることを避け、
抑揚をつけるためには、実はこのアイコンタクトを外す緩急が相当程度有効だ。田中投手は、それを見事に発揮している。
アイコンタクトを外す際に、右手側を見て1フレーズ話して視線を下に向け、左手側を見て1フレーズ話して視線を下に向け、中央を見て1フレーズ話して視線を下に向けるという動作を繰り返していることに気づいた人も多いに違いない。その方向には、質問した記者がいるのだろう。
記者会見のように
多数に対して話をするときに、広い会場にいるすべての聴衆を引き込むことは難しい。そのため、
1人に対して1センテンス話して、うなずくように視線を下に向けることが、聞き手を巻き込むことに役に立つ。