「生活保護の扶養照会は義務ではない」。田村厚労相からこの発言を引き出した小池晃の質疑

三親等まで扶養義務の対象なのは日本だけ

 続いて、小池晃議員は各国の扶養義務の範囲を比べることで日本の制度の異様さを浮き彫りにしていく。  5カ国(ドイツ、フランス、スウェーデン、イギリス、日本)を比較すると、日本以外の4カ国は扶養義務は1親等までだが、日本だけは3親等までと異様に広いことが一目瞭然だ。しかも、フランス、スウェーデン、イギリスに至っては、1親等の中でも更に狭い配偶者と子(未成年)に限定されており、親ですら対象外だ。
当日に小池晃議員が使用したパネルを筆者が改めて整理した表

当日に小池晃議員が使用したパネルを筆者が改めて整理した表

 こうした日本の制度の異様さを小池晃議員は指摘しつつ、扶養照会が申請をためらわせる原因になっていることを問い質していく。その質疑は以下の通り。(動画リンクの2分2秒〜) 質疑2 小池晃(2問目): 『日本はですね、民法上三親等まで扶養義務の対象としてますが、そんな国は日本しかないわけです。これ見てください。日本だけです。これだけ幅広い範囲で扶養義務を課している。でね、やっぱり生活に困窮していることが自分の子供や兄弟に知られたくないと、みんな思うじゃないですか。祖父や孫、ひ孫まで問い合わせがいくかもしれない。そう思えば、申請をためらう人も出てくると思うんですね。大臣、そういうことがあっても仕方がないと言うんですか?ためらっても仕方がないと言うんですか?』 田村憲久 厚労大臣:あの、基本的には親兄弟というところにですね、照会することが、まあ、あの、基本的なところであって、あの、祖父、孫というところはですね、あまりそういうような事例はないというふうにお聞きいたしております。赤信号)  あの、二親等でも、まあ、親兄弟というところに対して、あの、実際問題ですね、えー、それによって見守りをやって頂いたりでありますとか、あー、入院等々のですね、色んな、あー、まあ、移動の支援でありますとか、いろんな形でご支援を頂いているということは多くあるというふうにお聞き致しております。赤信号) 』  この2問目の回答の中身を確認すると、1段落目も2段落目も論点をすり替えており、赤信号とした。 1段落目 【質問】祖父母・孫への扶養照会による申請のためらい ↓ すり替え 【回答】祖父母・孫への扶養照会の頻度 2段落目 【質問】祖父母・孫への扶養照会による申請のためらい ↓ すり替え 【回答】親兄弟の扶養照会後の支援内容  田村厚労大臣は長々と答弁してはいるが、回答と解釈できる内容は一言も無い。

扶養紹介をしても援助に結びつかないという現実

 続く3問目で小池晃議員は、利用者の申請をためらわせている扶養照会を行った結果、援助に結びついているのかを確認する。その質疑は以下の通り。 小池晃(3問目): 『色々あると言うんですが、親族に扶養照会を行った結果、金銭的援助に結びついた件数はどれだけあるのか。調査結果示してください。』 田村憲久 厚労大臣:あのー、3.78万人、これ、全体の扶養照会件数。これ、28年7月にですね、えー、保護を開始した世帯に関する扶養照会の状況についての調査というものを平成29年度に行っておりますけれども、えー、この中で金銭的な援助が可能と回答した件数は3.8万件中ですね、600件でありますが、青信号)  何らかの形。先ほど申し上げました、あの、精神的な援助。それから、まあ、あの、いろんな日々のですね、見守りでありますとか、いろんな対応での、おー、まあ、支援といいますか、そういう扶養、何らかの扶養っていうのは、いうのは、えー、約1万件ございます。 赤信号) 』 小池晃: 『大変な手間なんですよ。戸籍に当たり住所を調べて手紙を送って問い合わせる。その結果、金銭的援助に結びついたのは1%程度しかないと。私はね、こういうことこそ前例踏襲ではなくて効率化すべきではないかと思いますよ。』  1段落目は質問である「金銭的な援助に結びついた件数」を答弁しているので青信号としたが、扶養照会の件数に対して非常に低いことが露呈している。  その後も答弁は2段落目まで続くが、論点をすり替えており、赤信号とした。 【質問】扶養照会後の金銭援助 ↓ すり替え 【回答】扶養照会後の何らかの援助
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ついに現職厚労相が認めた「扶養照会は義務に非ず」
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