日本のコロナ第3波。統計が厳然と示す現状と、残された一筋の光明

緊急事態宣言には効果があったのか

 本邦菅内閣による緊急事態宣言になにがしかの成果があったのかについて簡単に述べます。筆者が観測してきた限り菅内閣による緊急事態宣言(菅緊急事態宣言)の効果は見いだすことができません。実効再生産数が大きく下がったではないかという主張もありますが、それは錯覚です。但し、外食産業の営業制限(外食時短)の効果が統計に現れるのにはあと数日を要しますので筆者はこれに大きな期待を寄せています。
日本における第3波エピデミック

日本における第3波エピデミック。OWIDによる日百万人あたり毎新規感染者数に筆者加筆

 日本における第3波エピデミックは、季節性の波(Surge)と社会活動起因による一過性のSpike(棘)の合成波と考えられます。このうち基本波である季節性のSurgeは、11月前半まで等比級数的(指数関数的)増加を示し(Surge 1)、極めて危機的な状況でしたが、Go To Eat Pointの突然の終了と共に11月末から12月はじめには横ばいから僅かに減少となりました(Surge 2)。この時点(時間差から11月中旬から下旬)で大規模介入すれば、今の韓国よりも遙かにたやすく収束に持ち込めました。しかし、この千載一遇の機会を無為に見過ごした結果、12月上旬には等差級数的増加に移りました。  ここで筆者が恐れていた12/10ボーナス・忘年会起因のSpike 1、クリスマス・民間給与・華金・忘年会集中によるSpike 2、年末年始によるSpike 3が発生しました。  これらのSpikeの原因となるウィルスへの曝露(感染機会)は、菅緊急事態宣言が検討されていた時点で既に全て終わっていました。  従って感染者数が減少して見えているのは、菅緊急事態宣言の前に発生していた感染が、統計に表れる迄の遅行時間、本邦の場合約14日後に現れ過ぎ去って行ったものです。  菅緊急事態宣言の効果が現れるのは、1/26前後からですので筆者は、今週後半にどのような推移を示すかを見続けていましたが、残念なことに12/20以降、Spikeの下に隠れていたSurge 3の予測線上にエピカーブは綺麗に乗ってしまいました。菅緊急事態宣言の効果があるならば、これより下降していなければなりません。  勿論、菅緊急事態宣言は、順次拡大して行きましたので、来週週末までの更に10日間程度の推移を見届けねば、その実像が見えたとは言えません。しかし1/29現在、菅緊急事態宣言の効果は全く見えないと言うほかありません。菅緊急事態宣言の効果を評価するには、まだしばらくは経過観察の必要があります。とくに外食時短の効果が現れるにはあと数日から一週間を要します。少なくとも2/7迄に緊急事態宣言の終了の判断を行うことは時期尚早と言えます。

なぜ実効再生産数は使えないのか

 実効再生産数、再生算数には、様々な計算法や定義がありますが、本邦では西浦博博士のモデルと監修による数式が使われています。これは東洋経済ONLINEのCOVID-19データページ に掲載されています。  これによると実効再生産数の算出は、計算式は「(直近7日間の新規陽性者数/その前7日間の新規陽性者数)^(平均世代時間/報告間隔)」となります。要するに当日の7日間移動平均を前週同日の7日間移動平均で割ったものが変数となります。  従って現時点では既に通過してしまった一過性のSpike 3と季節性(連続性)のSurge 3との比較となり、この数値には意味がありません。実効再生産数が再び意味を持つのは、Spike 3の影響が完全に消える2/4以降となり、現状が続けば、R0>1.0になると予測されます。もしも外食時短の効果が現れれば、R0<1.0になる可能性が高いです。  実は、BBCやCNNでは、昨年2月から4月には毎日の様に報じられた実効再生産数は、6月頃からは殆ど報じられていません。どの国でも社会的現象を起因とする一過性のSpikeが実効再生産数を頻繁に混乱させるため、短期・中期における意思決定には使えない、むしろ有害であることが分かったからと考えられます。  勿論、Spikeの影響を無視出来る長期的影響評価に実効再生産数はたいへんに有用な重要指標であることは変わりません。
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日本は「お先真っ暗」か?
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