ブラジルのボルソナロ大統領 photo by Marcelo Camargo/Agência Brasil(CC BY 3.0 BR)
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は米国からトランプ大統領がいなくなって孤独感に苛まれている。
ボルソナロは、隣国アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領とは不仲にある。しかし、つい最近関係改善に向けてボルソナロが信頼している軍人フラビオ・ビアナ提督をブエノスアイレスに送ってフェルナンデス大統領の側近らと会談をもった。何しろ、ブラジルにとってアルゼンチンは米国に次ぐ最も重要な国だ。トランプがいなくなった今、その隣国と気まずい関係にあるのはボルソナロにとって孤立を更に強めることになるからだ。(参照:
La Politica online)
ボルソナロが大統領になったとき、それまでのルラとルセフと続いた二人の左派政権から180度方向転換させて米国とは強い絆で結ぼうと望んだ。
トランプ大統領を喜ばす為に、ブラジルにとって最大の投資国であり又貿易取引でもある中国への批判を強めるようになった。イスラエルのブラジル大使館をエルサレムに移そうとしてアラブ諸国との関係の悪化を招いた。更に、最近ではアルゼンチンがブラジルに輸出している小麦の輸入を一部削ってそれを米国から輸入することに決めた。これらはすべてトランプを喜ばす為であった。
その見返りとしてブラジルが得たのはトランプがブラジルのOECDへの加盟を推奨し、また米国から最新兵器の輸入も可能となった。これまで最新兵器の米国からの輸入が可能なのはラテンアメリカではコロンビアだけであった。
トランプが出席した国連総会でボルソナロが彼と通路ですれ違った時にボルソナロはトランプに「I love you」と兄弟関係にあるような親しい挨拶をしたのに対しトランプは「ここで君と会えたのは非常に喜びだ」と言って言葉を返したという。(参照:「
El Mundo」)
トランプとあたかも兄弟であるような関係を築いたボルソナロであったが、今トランプがいなくなって米国の新しい外交にどのように対応して行けば良いのか戸惑っているというのが彼の心境だ。なにしろ、外相には「西欧文明の灯台のような人だ」と述べてボルソナロ以上にトランプを崇拝しているエルネスト・アラウージョがいる限り、ボルソナロのバイデン新大統領との関係づくりは尚更容易ではない。
因みに、ブラジルは現在中国からワクチンの輸入交渉をしているが、ブラジルのメディアによると、中国政府はその為には先ずアラウージョ外相を解任するのが条件だと回答したそうだ。(参照:
La Politica online)
ルラ元大統領の政権時に外相を務めたセルソ・アモリンは「外相を変えるだけでは十分とは言えない。彼の(極右の3人の)息子は解任できないとしても、新しい現実に彼が順応して行けるか、あるいはトランプと極右を今後も支持して行くのか観察して行く必要がある」と語り、さらに「ブラジルの金融界や影響力のある人たちの間では米国の新政権と争うようようなことになるのは良いことではないと考えている」と述べた。