昨年12月15日のPornhub一斉削除によって「守られた」もの

 昨年末、急にPornhubの動画が一斉に削除され、ダウンロードができなくなった。この騒動を日本のAV業界はどう見ているのか。関係者や女優に聞いた!

地殻変動を迎えるAV業界

Pornhub 昨年の12月15日、世界最大のポルノサイトである「Pornhub」(以下、ポーンハブ)が1000万本以上の動画を一斉に削除したことで、一時ネットの一部が騒然とする事態になった。  発端は米国人記者の告発だった。「未成年者を性的虐待する動画が多数あり、違法作品により収益を得ている」との記事が米ニューヨーク・タイムズ紙に掲載され、直後に決済会社が取引を停止。ポーンハブは経営危機に陥った。  これを受け、著作権やプライバシー権を侵害する違法な動画をポーンハブが一斉に削除したというわけだ。動画の削除だけでなく、海賊版の温床となっていた未承認ユーザーのアップロードも禁止。動画ダウンロード機能についても無料ユーザーは不可となった。  この「1215ショック」で、日本の一部ユーザーがSNSや掲示板で狼狽。告発した記者への殺害予告とも取れるつぶやきまで現れる始末だった。

AV関係者からは歓迎の声

 ポーンハブにおいて、日本は米国に次ぎ第2位のアクセス数を誇り、国内のサイト別トラフィック量でもフェイスブックやウィキペディアより高い10位にランクインしている(’20年、シミラーウェブ調べ)。  国内最大手のアダルトサイト「FANZA」よりもユーザーが多く、ポーンハブの存在は日本のAV業界にとって長年悩みの種だった。  一連の騒動を受け、AV関係者はどう思っているのか。メーカーの著作権を保護する活動をする知的財産振興協会にまず聞いた。 「ポーンハブについては、従来からパトロールで海賊版動画の削除要請を日々、送っていました。  今回、大量の動画削除は大きな驚きでしたが、AV作品の海賊版対策に取り組む立場としては当然、歓迎すべき流れです」  一方、AV女優の労働環境や権利向上に取り組む日本プロダクション協会(以下、JPG)も次のように指摘する。 「被害に遭った女優がサイト側に削除依頼をしても、著作権がないため削除してもらえないケースが多かった。しかも、一度アップロードされると、次々とコピーされて広がっていく。  泣き寝入りするしかなかったので、今回の決定は好意的に見ています」
次のページ 
「女優だった過去を消したい」と願う女性たちを脅かす違法サイト
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会