私たちに「世界を変える力」はある。総選挙で投票に行き、それを証明しよう

民主主義

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世界の大問題を解決する能力

 料理研究家の土井善晴氏が、私たちに「世界の大問題を解決する能力がない」とツイートし、多くの賛同を得ています。具体的には「地球環境のような世界の大問題をいくら心配したところで、それを解決する能力は一人の人間にはない」とのツイートです。  しかし、これは事実に反する「呪いの言葉」です。小中高で社会科・公民・政治経済を教える教員、大学で社会科学を教える教員からすれば、社会的な影響力を持つ人がこのように発言し、それに多くの人々が賛同することにショックを覚えるでしょう。学校・大学で教えている事実に真っ向から反する考え方です。  なぜならば、少なくとも日本国籍を有する人は、参政権という「世界の大問題を解決する能力」を持つからです。小学校の社会科、中学校の歴史・公民、高校の現代社会・政治経済という科目は、そのことを様々な面から教えています。憲法や政治の仕組みについて、必ず学んでいるはずです。政治体制の変化を中心に歴史を学ぶことも、現代の民主主義がどのように成立してきたを学ぶのです。  子どもや日本国籍を有さない人であっても、当事者性という重要な政治上の役割を有しています。有権者でないからといって、日本社会の一員であることが否定されているわけではありません。社会の矛盾やひずみがしわ寄せされやすいそれらの人たちの意見を社会に反映させることについて、既存の主権国家システム(1648年に起源をもつ古いシステム)と折り合いをつけるための方法を、私たちが確立していないだけです。  加えて、個人の選択や努力、創意工夫によって、参政権にとどまらない力を発揮する人々もいます。国連などの国際機関で働く国際公務員、国や自治体の公務員、投資先・融資先を持続可能性で判断する金融機関の社員、環境負荷の低い製品・サービスを開発・提供する企業の社員、持続可能な社会を模索する研究者、地球環境などの社会問題を伝える教育者・ジャーナリスト、持続可能な社会づくりに取り組みNGOスタッフなど。例を挙げれば、キリがないほどです。  最大の問題は、私たちが「世界の大問題を解決する能力がない」と思い込むことで、行動を諦めることです。なぜならば、私たちの「世界の大問題を解決する能力」は、多くの人々が力を合わせることで発揮される力だからです。それ故に、土井善晴氏のツイートは「呪いの言葉」を自己成就させる危険をはらむのです。

日本の有権者総数を100人として考える

 安倍・菅政権で様々な不祥事が頻発してきたものの、与党の自由民主党にはそれを反省する様子が見えません。自民党から多額の資金が投入された選挙における河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反事件ですら、自民党としての問題でなく、河井夫妻の個人的な問題と認識しているようです。実際、当時の総裁であった安倍晋三議員、幹事長の二階俊博議員、特別なテコ入れをした菅義偉首相のいずれも、河井事件における責任を取っていません。  同様に不祥事が頻発した1990年前後、自民党内で反省と激論が交わされ、その後の自民党分裂と政治改革に至った状況と、極めて対照的です。解決策として実行された選挙制度改革が適切だったか否かはさておき、少なくとも中堅・若手議員を中心に、有権者から見限られるとの強い危機感が共有され、派閥の領袖たちを厳しく突き上げました。  安倍・菅政権において、自民党の中で危機感が広がらないのは、どれだけ不祥事があっても、議員たちが議席を失わないとの安心感を抱いているからと考えられます。自民党副総裁だった大野伴睦の「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」との言葉のとおり、国会議員、とりわけ自民党の国会議員は落選を恐れます。だから、政治改革の変動が起きました。それなのに、なぜ安心感を抱けるのか、例えで説明してみましょう。  とても大雑把な例えですが、日本の有権者総数を100人とすれば、与党の岩盤支持層が30人、野党の岩盤支持層が20人となります。ここでいう与党とは、自民党と公明党のブロック、野党とは立憲民主党と日本共産党のブロックです。岩盤支持層とは、晴れても雨が降っても、何があっても投票に行き、支持政党に投票する人々のことです。単純化するために、与野党どちらのブロックにも属さない政党(維新など)は省いています。  この例えでは、投票率が50%より上がる場合、その分だけ無党派層の投票者が増えることを意味します。ここでいう無党派層とは、与野党どちらのブロックに投票するか、その時々で異なる人々のことです。注意しなければならないのは、自分のことを無党派層(支持政党なし)と認識していても、実際のところ、いつも与党ブロックに投票していれば与党の岩盤支持層、逆ならば野党の岩盤支持層と見なされることです。  安倍政権の成立後に行われた5回の国政選挙はいずれも55%を下回り、例えでいえば、無党派層50人のうち2~3人しか投票に行っていない状況です。2013年の参院選は52.6%、2014年の衆院選は52.7%、2016年の参院選は54.7%、2017年の衆院選は53.7%、2019年の参院選は48.8%でした。詳しい投票率の推移は、総務省のホームページをご覧ください。  この間、もっとも高い投票率54.7%を例にして、無党派層5人全員が野党に投票したと仮定しても、与党30人対野党25人で、与党多数となります。実際には、無党派層の全員が野党に投票することはあり得ませんが、最悪ケースを想定しても、与党多数となることがポイントです。  これは大雑把な「相場観」を示す計算で、現実とは大なり小なりズレますが、少なくとも自民党幹部らが選挙に安心感を持つ理由となります。現実には、衆参ともに小選挙区(1人区)を中心とした選挙制度で、一票の格差が自民党の地盤である地方に有利なため、獲得議席数は与党へ有利に働きます。この選挙制度等のメカニズムについては、拙稿「民意をデフォルメする国会5重の壁」で解説しましたので、ご覧ください。
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「政治への失望」は愚劣な政権の思う壺
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