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戦後の総選挙(衆議院選挙のこと)の
投票率(有権者数に占める投票した人の割合)は、時代を経るにしたがい、
低下傾向にあります。1957年の76.99%をピークに、1990年頃までは70%前後で推移していましたが、現在は55%前後になっています。
総選挙における投票率の推移(総務省ホームページより)
棄権の理由については、総務省の外郭団体である「
明るい選挙推進協会」が、毎選挙後に世論調査をしています。2017年総選挙での棄権理由を見ると、上位の棄権理由(複数回答)は次のとおりです(類似の回答をまとめています)。
●
適当な政党・候補者がない、違いが分からないから 41.3%
●
投票しても政治は良くならないから 28.2%
●仕事や大切な用事があったから 27.8%
一方、投票率の高い総選挙は、有権者の一票で政治が変わるのではないかと、期待を抱かせる選挙であったことが、おおむねの共通点です。例えば、ピークの第28回総選挙は、1955年に保守合同で自由民主党が成立し、社会党再統一で日本社会党が成立した後、初めての総選挙でした。1980年の第36回総選挙は、自民党内の抗争で内閣不信任案が可決されたことを受けての総選挙でした。2009年の第45回総選挙は、民主党を中心とする政権に交代した総選挙でした。
つまり、自らの考え方に合う政党・候補者の出現を含め、
自らの一票に「手ごたえ」を感じる有権者が増えれば、それだけ投票率が高まることが分かります。期日前投票や投票所の増加など、投票しやすい工夫をすれば、投票日当日に仕事や大切な用事がある有権者も、投票しやすくなるので、さらに投票率は高まるでしょう。
政治学研究者としては、棄権する有権者に対して「あなたの一票でくらしはもっと良くなる」と声を大にしていいたいところですが、正直に告白すると、ちゅうちょしてしまいます。あなたの一票でくらしはもっと良くなる(かもしれない)と言うのが精一杯です。
なぜならば、
民意の率直な反映を阻む仕掛けが、政治システムに組み込まれているからです。それらは、選挙制度のように見えやすいものから、国会や政党の仕組みのように気づかれにくいものまで、数多くあります。
つまり、
政治は、民意を「デフォルメ」したものです。民意の特徴を誇張したり、簡略化したりしています。もちろん、デフォルメといっても、バリエーションは様々です。『週刊朝日』の人気連載「山藤章二の似顔絵塾」に掲載されている著名人の似顔絵を思い浮かべるといいでしょう。デフォルメした似顔絵といっても、肖像画のように本人に忠実な絵から、かけ離れているけど特徴を捉えている絵まであります。
そこで、国会に限定してですが、民意がどのように反映されていくのか、何が民意をデフォルメする壁(フィルターといってもいいでしょう)になっているのか、主な制度について解説します。原則となる考え方から、制度を一つ一つひも解き、選択肢を提示します。
ちなみに、国会に限定したのは、論点を拡散させないようにするためです。本来は、国の政治制度と自治体の政治制度は、相互に関係しているのですが、論点が複雑になるため、今回は触れません。その点は、機会を改めて解説したいと考えています。