Qアノンだけじゃない! メジャーリーグにも蔓延る「陰謀論」

MLBイメージ

写真は本文と関係ありません。photo by Sue Park via Pixabay

アメリカに陰謀論が蔓延っている

 最近、誰も彼もが何かといえば陰謀論を言い募る。  米国人がそんなことをぼやいているのを聞いた。  有名なものでは、米大統領選で混乱を助長したQアノンがあった。  Qアノンとは、2017年に米国のインターネット掲示板「4chan」から派生した陰謀論を唱えるコミュニティ、あるいはネットワークのことだ。社会は巨大な闇組織によって支配されており、トランプ前大統領はその組織と戦い世界を救うヒーローだと、Qアノン信者は信じている。米経済紙ウォールストリート・ジャーナルの解説によると、彼らは2つの大きな事象が起こることを待ち望んでおり、1つは「ザ・ストーム(嵐)」、もう1つは「ザ・グレートアウェイクニング(大覚醒)」だという。嵐とは、権力者の地位にある人々が大量逮捕となり、彼らが待ち望んでいる粛清が行われること。大覚醒とは、すべての人々がQアノンの理論は常に正しいのだという悟りの境地に達するような大きな社会のうねりが起こり、それによって社会がユートピアの時代に突入することだという。  世界的に拡大が収まらない新型コロナウイルスに関しても、いくつもの陰謀論が語られている。 「新型コロナウイルスはでっち上げ。そんなものは存在しない」という論や「政府は緊急事態の状況を作ることで人民をコントロールしようとしている」という論。「5Gのテクノロジーが新型コロナウイルスのパンデミックを起こしている」「世界の権力者たちがパンデミックに乗じて人々の体にマイクロチックを埋め込み監視または操ろうとしている」「権力者たちは人々の憲法上の権利を侵害するためにマスクの着用を命じている」「ワクチンとマスクは反自由主義、反アメリカ主義を現すものである」といった陰謀論もあった。  こうした陰謀論は社会的な不安や不透明さからきている面が大きいが、最近はそれだけではなく日常生活やビジネスシーンでもお手軽な陰謀論が蔓延している。筆者は米国のスポーツ界で主にMLB(メジャーリーグベースボール)を取材しているが、このところ米球界の陰謀論を立て続けに見聞きした。

コロナ禍で代理人に生じた焦りや苛立ちが生んだ陰謀論

 1つはオフシーズンのストーブリーグ中に起こった。  コロナ禍のため各球団が大きな損失を出したため、昨年10月から今年にかけてのこのオフは、戦力補強をするにも大きな出費を控える傾向が例年以上に強い。FA選手の市場はかつて類を見ないほど停滞し、本来なら引く手あまたのはずのトップクラスの選手でさえ、年が明け春季キャンプ開始まで数週間という時期になっても所属チームが決まらない状態。節約したい球団にしてみれば、キャンプ開始が迫って選手が焦ってくれば相場より安く選手と契約できる可能性が高まるため、じっくり待った方が得策だからだ。だが選手の契約をまとめなければならない代理人は、まったく無反応な球団に対して苛立ちや焦りを募らせている。  そんな中で1人の代理人が「球団は、選手と契約を結ばないように談合している」と糾弾した。もちろん談合などあるわけはなく、単に各球団が予算に沿い市場原理の下で動いているだけなのだが、代理人は自分の利益に反する状態に絶望し、陰謀論を唱えたというわけだ。
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陰謀論が跋扈する背景に透けて見えるもの
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