アルゼンチン政府はそれを昨年5月から法案化に着手した。そして11月に入ってその草案が出来上がった。政府はこの法案によって目標とする歳入総額を3000億ペソ(3600億円)と定めた。その為に政府は
資産が2億ペソ(240億円)以上の所有者から税を募るとした。その対象になる超富裕者は
およそ1万2000人いると判断した。
その税率は
国内に資産を持っている人の場合は2%から3.5%までの枠内とし、外国に資産を持っている人の場合は3%から5.25%との幅とした。しかし、法制化されて60日以内に外国にある資産を国内に持ち込んだ場合はその税率は国内の税率を適用するとした。〈参照:「
iProfesional」〉
アルゼンチンは他の多くの国のラテンアメリカ諸国の富裕者と同様に国の経済への信頼性が低いということから外国に資産を持っている人が多くいる。
アルゼンチン経済紙『
iProfesional』(2020年12月5日付)が掲載したリストによると、アルゼンチンの超富裕者のトップは
パン・アメリカン・エナージーのオーナーアレハンドゥロ・ブルゲロニーで、彼の資産は54億ドル。因みに、
前大統領だったマウリシオ・マクリはファミリーとして超富裕者のリストに掲載されていて、その資産は5億4000万ドル。
この超富裕者から税を徴収することに対して、彼らの方から反対の声も上がっている。その理由として「
企業家は国に投資しなくなる。国から出て行く企業家が多くいるはずだ」と述べたのはアルゼンチンで2番目の富裕者
マルコス・ガルペリンというネット販売のリブレ・メルカドの創業者だ。彼の資産は42億ドル。〈参照:「
iProfesional」〉
昨年11月にアルベルト・フェルナンデス大統領と官邸にて超富裕者が数人集まっての会食の際にも「富裕税が議会で承認されるようになると、投資は更に逃げて行く」と誰もが大統領に語ったそうだ。
なお、政府は今回の徴税は一度だけの施行だとしている。
ただ、富裕者だけを対象にした徴税は一般に当初見込んだ額よりもかなり低い歳入にしかならないというのが一般の傾向としてある。なぜなら彼らにはそれから逃れる為の手段を色々と講じるだけの能力を備えているからである。
<文/白石和幸>