新型コロナウイルスの検査には、抗原検査・抗体検査・PCR検査の3種類があり、ネットにはさまざまな検査キットが流通している。しかし、検査結果の過信は禁物。陰性であっても“隠れ陽性者”の可能性があるからだ。関西に住む51歳の男性は、検査キットの精度に憤る。
「ホームページに医師会の会長やタレントが出ていて信頼できるものだと思って購入し、年末の帰省前に、抗原検査と抗体検査を試してみるとどちらも陰性。でも、倦怠感があったので、念のため帰省を控えました。数日後、38.5℃の発熱と味覚障害を発症し、再び検査をしても陰性。
疑わしく思って病院でPCR検査すると、陽性でした。『症状が出ている人は検査できない』と14か所も病院に断られて、病院を探すのも大変でした。SNSには同じ検査キットの陰性結果を信じて帰省した人もいたので、これはもはやテロですよ」
男性が使用した検査キット。「使用した4つすべてが陰性。1個5000円で不良品がないよう6つ購入しましたが、3万円も無駄にしました」
消費者庁では昨年末、抗体検査キットを販売する事業者6社に「感染の判別が可能」といった表示を改めるよう行政指導を行った。前出の北條氏は「その場で結果がわかる簡易キットはまったくあてにならない」と断言。では、どういったものを選べばいいのか。
「判断材料は2つ。一つは、国が認可した検査会社を通しているか。検査会社を利用する場合、1万6000円の費用がかかるためそれ以下の安価なものは検査会社を通さずに結果を出している可能性が高い。絶対的な基準にはなり得ませんが、目安にはなるはず。電話で検査会社の社名を確認しましょう。
もう一つは咽頭部か鼻腔から採取するものかどうか。唾液と違って咽頭部や鼻腔は不純物がほとんどなく、検査の正確性が高い。とはいえ、そもそも自己採取を正しく行うのは難しい。コロナの検査をするなら、国が認可している病院の医師のもとでPCR検査を受けるようにしてください」
検査キットには要注意だ。
【理晏代表取締役・北條康弘氏】
医療法人社団颯心会代表理事。医師による在宅医療サービスや、出張PCR検査などを提供。著書に『
在宅医療の光と闇』(幻冬舎)
【
NPO法人ワールドオープンハート理事長・阿部恭子氏】
犯罪加害者家族の支援や啓発活動を実施。’20年9月からコロナ感染差別のホットラインを設け、現在までに42件の相談を受けた。
<取材・文・撮影/桜井カズキ 松本果歩 ツマミ具依>