カジノ住民投票を否決した、横浜市会と林市長の横暴

横浜

たっきー / PIXTA(ピクスタ)

19万筆以上の署名を集めながら、わずか3日間の審議で否決された横浜カジノ住民投票

 2021年1月8日、19万筆以上の署名を集めた「横浜市におけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致についての住民投票に関する条例の制定」は横浜市会で否決された。直前の昨年11月までは「住民投票の結果を尊重する」「条例の議案にはニュートラルな立場で意見を付ける」などと定例記者会見で繰り返し発言した林文子市長は、舌の根も乾かぬ昨年12月下旬に反対意見を付けて議会に議案を提出。年末年始の慌ただしい時期を狙ったかのように年明け直後の1月6日から僅か3日間という強行日程で審議を行い、最終日の1月8日に議会で過半数を占める自民・公明の市議によって否決された。つまり、「カジノの是非を決める住民投票」は、そもそも実施すらされないことが議会によって決定した。  約1年前の過去記事「このままでは横浜カジノは止められない。住民投票とリコールの足の引っ張り合いを防ぐための提言」でも指摘した通り、住民投票は市長が反対意見を付議できる上に議会で否決できるため、カジノを推進する立場の自民党と公明党が過半数を占める横浜市会において、この展開は1年以上前から予想できたことだった。だが、住民投票条例をめぐる林市長および自民・公明の想像以上に強引な進め方には改めて驚かされた。もはや横浜市会の議会制民主主義は既に崩壊したと言っても過言でなく、横浜市民である筆者としては今後の横浜市の先行きに大きな不安を抱いた。  本記事では、1月8日の採決直前に住民投票条例の否決に反対(=住民投票を実施すべき)の立場で討論した無所属・井上さくら市議の討論内容を紹介しながら、横浜市会の異常さを以下4点に分けて解説していく。 1.林文子市長の公約「市民の意見を踏まえて方向性を決定」の反故 2.地方自治や民主主義すらも否定した市長意見 3.IR整備法基本方針で定められた合意形成の無視 4.スケジュール優先で事業者公募を始める危険性(長期契約リスクと損害賠償責任) *記事中の動画リンクが表示されない配信先で読んでいる場合、筆者のyoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」で視聴できます *井上市議の討論全文は筆者のnote「【文字起こし】カジノ住民投票の条例制定 討論 2021年1月8日横浜市会」で公開中

林文子市長の公約「市民の意見を踏まえて方向性を決定」の反故

 まず、討論の冒頭において井上さくら市議は2017年の市長選挙前後の林市長の発言の矛盾や公約反故を指摘している。以下、その内容を抜粋して紹介する。(下記の動画リンクの2分39秒〜) 井上さくら: 「今日も多くの議員が指摘し、この住民投票実施の直接請求を行った市民の皆さんが憤り、私も繰り返し申し述べてきたように4年前の選挙で市長は「カジノは白紙」と喧伝し、公約で『市民のご意見を踏まえ、方向性を決定』と記載をして、徹底してカジノIRを争点から遠ざけました。自らの選挙に不利になると考えたからこそ、カジノIRは白紙として市民の判断から逃げ、その後も市民に問うことなく、IR導入の準備を進め、ついに当時の申請スケジュールの中でギリギリのタイミングであった一昨年の8月、突如としてIR実現を宣言しました。  今日まで一貫して市民の民意から逃げながら、一方でカジノIR導入方針は決まったこととして、その手続きを強引に推し進めようとしている。そのことに市民がなんとか待ったをかけようと膨大な時間と労力。そして、このコロナ禍において、大きなリスクを負いながら直接請求という手段を取らざるを得なかったんです。冒頭申し上げた通り、新型コロナ感染症における緊急事態宣言下において、この新型コロナの脅威に向き合い、市民の命を守るための議論に集中できない原因を作った責任をまず市長には自覚して頂きたいと思います。」  井上市議の討論はいったんここまでにして、内容について解説していく。  林市長の2017年の市長選挙公約は今も林市長オフィシャルサイト内で公開されており、「政策編 10のお約束」の9点目「国際交流・観光・MICE・文化」(リンク先資料のP39)にはっきりと以下のように記載されている。 “「IR(統合型リゾート)の導入検討 依存症対策やIR実施法案など国の状況を見ながら、市として調査・研究を進め、市民の皆様、市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性を決定 」“ (林市長 選挙公約資料より)  市民の意見を聞く絶好の機会である住民投票に反対意見を付議したことは、この公約を反故したことに他ならない。また、多くのメディアが報じたのでご存知の方も多いと思うが、2017年の市長選挙の際は「カジノは白紙」と言いながら、2年後の2019年8月に一転してカジノ誘致を表明したことは記憶に新しい。しかも、誘致を表明する僅か1ヶ月前までの記者会見では依然として「白紙」発言を繰り返しながら、誘致表明会見では実現に向けた資料が全て揃っているという確信犯ぶりを見せつけた。 *この市長発言の変遷については、下記の動画リンク参照
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地方自治や民主主義すらも否定した市長意見
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