映画『大コメ騒動』が2021年の現在と重なり過ぎる! 理不尽さに抗う庶民の物語

豪華キャスト集結の群像劇

©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

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 1月8日より、映画『大(だい)コメ騒動』が公開されている。本作がモチーフとしているのは、タイトルでわかりやすく示されているように、実際に起こった米騒動だ。  出演者はとても豪華であり、主演を井上真央、強烈な女性たちのリーダーである“おばば“役を室井滋、ストーリーテラーを立川志の輔が務めている。西村まさ彦や柴田理恵など舞台となる富山県出身の俳優たちも集結し、その他にも夏木マリ、鈴木砂羽、吉本実憂、工藤遥、三浦貴大、吹越満、中尾暢樹、木下ほうかなどの実力派が揃っている。主題歌を米米CLUBが書き下ろしているというのも素敵な采配だ。  それぞれの俳優は出演時間が短かったとしても、その持ち味を活かしたインパクトの強い役を演じており、特に町の権力者を石橋蓮司がいつも以上に極悪非道に演じているのは見逃せない。多くの個性的なキャラクターを多角的かつ簡潔に見せていくという、“群像劇“としての面白みがある内容になっているのだ。  予告編やパッと見のイメージでは、米騒動の最中に起きたドタバタを面白おかしく描いたコメディであるように思われるかもしれないが、実際は現代に通ずる大切な価値観を再認識できる、学びの多い社会派ドラマという印象も強かった。さらなる具体的な魅力と特徴を、以下より紹介していこう。

理不尽かつ我慢を強いられる物語が必要だった

 富山の貧しい漁師町で暮らす松浦いと(井上真央)は、米俵を担いで浜の船まで運び入れるという過酷な仕事を続けていた。当初はその日当で1日分の米を買えていたはずが、その後はコメの値段が際限なく上がっていく。やがて町の女性たちの不満は頂点に達し、彼女たちは米屋へと押しかけ、今までの値段でコメを売ってくれるよう交渉をすることになる。
©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

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 物語の根底にあるのは、庶民たちが直面する「理不尽」だ。自分たちは必死で肉体労働をして何とか1日分の米が買えるほどだったのに、米屋は自分たちの思い通りにコメの値段を釣り上げていく。その後は新聞社をも巻き込んで、それぞれの立場や思惑が交錯していく。  米屋を初め、権力者側の策略ははっきりと非道なものであり、主人公がまんまとその罠にはまってしまったり、彼女たちを応援する立場であるはずの新聞社の青年にも大きな壁が立ちはだかってしまったりもする。仲間同士の内輪もめも起こり、中には逮捕される者も現われる。全体的には痛快無比なコメディというよりも、「我慢」を強いられる苦しい展開が多い。  もちろん、その苦しい展開も意図的であり、作品には必要なもの。どの時代や場所でも、圧政や権力者に苦しめられる庶民という図式はよくあるものであるし、「家族にお腹いっぱい食べさせたい」という切なる願いがあるからこそ、登場人物に感情移入ができる。
©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

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 そこまでに我慢に我慢を重ね、追い詰められた彼女たちが、ただ苦しんで終わるはずがない。そのどん底から、どのように反撃に向かい、そして変革をもたらすのか、ということにこそ面白みとカタルシスがあり、最終的には十分にスカッともできる物語になっているのだ。  なお、この『大コメ騒動』と同じく本木克英監督が手がけ、大ヒットした『超高速!参勤交代』(2014)も、実際の本編は大笑いできるコメディというよりも、ダウナーな雰囲気も存分にある映画だった。劇中の参勤交代は冒頭から「苦行」と揶揄されるほどにブラックな行事として描かれているし、種々のエピソードも良い意味で理不尽に感じるものが多かったのだ。こちらを楽しめた方は、今回の『大コメ騒動』も気に入るだろう。
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2021年の現在と重なる世相
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