今回の政府の間接的な支援では資金面で窮状にある営業店には全く役に立たない。彼らが現在必要としているのは資金不足を補うべく資金の供給が必要なのであって、納税の延長や融資をさらに受けれることではないということだ。政府に資金がないというのは理解されるが、飲食店やホテル業界が陥っている事態の深刻さが政府には十分なほどにわかっていないように思われる。
例えば、『
Vozpopuli』(12月2日付)はスペインにある1万8250軒のホテルの内の7654店は現在も閉めていることを報じているが、状況次第では閉めているホテルの何軒かは廃業する可能性もある。
売上がないから出費を抑えるべく閉めているのであるが、その一方で毎月発生する固定費がある。その固定費を売上が無くても継続して払って行ける資金が必要だ。その為の資金付与を政府から期待していた。長期間それを賄える資金的な余裕は中小のホテルにはない。ところが、政府は納税の半年の遅延などを容認した。ところが、これにも一つ落とし穴がある。4か月目から納税遅延の金利を負担せねばならないというのである。これでは救援策にはまったくならない。
スペインの旅行代理店への政府からの支援もないということから察することができるように、政府にはスペインのGDPにおける観光業が占める比重の重要性なを肌で理解していないように思える。コロナ禍から回復すれば最初に立ち直るのは観光業界である。しかし、これで外国からの観光客を呼び戻すことは容易ではない。その面で政府にはサンチェス首相を始め閣僚の間でもセンシビリティーという面における不足は否めない。
スペイン電子紙『
Vozpopuli』(12月21日付)によれば、2007年から2014年の間に飲食店並びにホテル業界で廃業した店は5509軒と記載しているが、それが12月15日付の電子紙『
El Confidecial』や『
El País』が指摘しているように、コロナ禍で今年10月までで一挙に
8万5000軒が廃業に追い込まれたというのである。ということは、12月までにはさらに廃業する店が出て来る可能性が十分にあるということになる。
またこの業界での雇用面について見ると、170万人が従事しているこの業界で今年既に68万人が失業者となっている。それが関連業界で40万人の失業をもたらすことに繋がっている。(参照:「
El Pais」)
また売上の面から見ると、この業界は年間で175億ユーロ(2兆1000億円)をもたらしているが、今年はすでに67億ユーロの売上が企業の廃業から減少することになる。即ち、年間売上の40%が今年既に達成できなくなっているということになる。(参照:「
El Confidecial」)
政府や経済開発機構(OECD)などは2021年度のスペインのGDPが5%あたりまで回復すると予測している。しかし、今年の外国からの観光客は83%減少し、自動車業界などでも楽観的な期待はもてない状況にある。それが来年は5%まで経済が回復するといった期待は余りにも楽観視したものであり、絵に描いた餅でしかないように筆者には思える。
あいも変わらず「中抜き」し放題の制度で、どこかの誰かの懐を潤わせたうえに、感染拡大を促してしまった「GoTo政策」に固執し、非常事態宣言は遅れ、いまさらのように非常事態宣言を言い出す一方で具体的な補償策ではなく、罰則規定にこだわっている国と被って見える。
<文/白石和幸>