壊れ切ったアメリカの民主主義は彼らが激変させる!? 元ホームレスやパレスチナ移民もいる、AOCが「家族」と呼ぶ議員たち

パレスチナ系初の女性議員も

ラシダ・タリーブ  これまで紹介したプログレッシブ議員たちと同じくアメリカ民主社会主義者(DSA )に所属しており、パレスチナ系初の女性議員になったのは、ラシダ・タリーブ議員だ。(参照:POLITICO MAGAZINEDETROIT FREE PRESS)  例に漏れず、トランプ前大統領から非難を受けた点も共通しているが、注目したいのはその行動力だ。  『ポリティコ・マガジン』の報道によれば、ヒスパニック系が多く暮らす地域では移民捜査局による違法な捜査が横行しており、こうした問題が話題となる前からタリーブ議員は反対運動を起こしていたという。  また、地元デトロイトで石油コークスの不法投棄が問題になった際は、自ら現場に出向き、ジップロックに証拠を集めて歩いたというから、文字通り「地に足のついた」議員だ。『デトロイト・フリー・プレス』で、タリーブ議員は彼女の政治姿勢について次のように話している。  「対立的であろうがなかろうが、私の公役へのアプローチは、家族のために戦うというものでした。私が対立的でなかったら、つまり敷地に不法侵入してサンプルを集め、自ら検査をしなかったら、河川から石油コークスを除去することもできなかったでしょう。州の指示に逆らって発見された『有毒ではない』ものを公表することが対立的であるなら、それをやるまでです」  まさに「忖度なし」のタリーブ議員。当選した際には、出身地であるパレスチナでも祝福されたというが、中東にルーツを持つことから、今後は世界情勢についても進歩的な変化をもたらしていきそうだ。

元ホームレスのシングルマザー

コリ・ブッシュ  昨年、ミズーリ州で黒人女性では初となる連邦議員に選ばれたコリ・ブッシュ議員。「ブラック・ライヴズ・マター」(BLM)の活動家としても知られる彼女は、ホームレス経験のある看護師でシングルマザーという、まさに叩き上げの存在だ。  警察組織の刷新皆保険妊娠中絶の権利などは、ほかの進歩的議員たちにも共通する政策だが、特に注目されたのは軍事予算に関する提言だ。 追加で軍事予算にまわされるすべてのお金は、公共サービスから奪われたお金です」  防衛費を削減し、公共サービスを充実させるべきだというのは、ブッシュ議員がかねてから主張していることだが、こうした「過激」な発言に対しては、トランプ前大統領の長男などから反対の声が噴出した。  地元ミズーリ州で新たな歴史を刻んだように、国政でも多くの既得権益や社会構造を変えられるか、ブッシュ議員からは今後も目が離せないだろう。  前後編にわたって紹介してきたプログレッシブ議員たちだが、多様なバックグラウンドを持ち、ゼロからキャリアをスタートさせ、30〜40代で国政にまで進出し、「アンタッチャブル」であった既得権益や社会構造にメスを入れる姿は、日本人の我々にも刺激になるはずだ。  ここ日本でも、そうした進歩的な政治家が誕生することを期待しながら、彼らの活躍を見守っていきたい。 <取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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