異例のNHK“ブーメラン人事”の裏に、前田新会長の「人事制度改革」構想!?

1年ほどで再び大阪局長に戻るという異例の人事

NHK大阪拠点放送局

NHK大阪拠点放送局

 出世する人の人事は“上り”の一方通行だ。異動のたびに地位が上がる。ブーメランのように元のポジションに戻るなんてことはない。もしもあったら、それは何か異変が起きての“左遷”と受け止められる。  そんな“ブーメラン人事”がまさに昨年秋、NHK大阪拠点放送局(略して大阪局)のトップに起きた。組織人なら誰しも人事、特に異例の“左遷”に興味があるだろう。NHK内がざわついたのはもちろん、関西の報道関係者の間でも噂になった。 「いったい何があったんだ?」  これは単純なNHK内の人事抗争の話ではない。大きな人事改革構想が絡んでいる。人事は組織の要だから、どんな組織にも相通じる話だ。受信料値下げの議論が本格化する中、多くの方に関心を持っていただける話だと思う。 “ブーメラン人事”と話題になったのは、NHK大阪局の局長、角英夫(かど・ひでお)さん。元はディレクター、プロデューサーで『NHKスペシャル』などの大型番組を担当し、2016年から3年間、大阪局の局長を務めた。  ちょうど私が大阪報道部で森友事件を取材し、その後記者を外されてNHKを辞めた時期にあたる。この時の人事に角さんの意向は関係ないはずだ。むしろ私の仕事に理解を示してくれた、ありがたい上司だったと思っている。  角さんは2019年、大阪局長から東京本部の広報局長に異動となり、2020年4月、役員にあたる理事に就任した。順調に出世の階段を上っていたのだが、理事就任から半年もたたない2020年10月、大阪局長に戻る人事が発表された。理事を兼任したままなので単純な逆戻りではないが、1年ちょっとで再びの大阪局長はやはり極めて異例だ。  この人事についてNHKは「首都直下地震などで東京・渋谷の放送センターの機能が失われる事態に備え、いざという時に大阪から放送を出すバックアップ機能を強化するため」と説明している。実際その意味合いはあるようだ。

角さんの後任だったA氏は大阪局長を更迭され、新設の役職に

NHK新会長・前田氏

NHK新会長・前田晃伸氏

 この人事を断行したのは2020年1月にNHKの経営トップである会長に新たに就任した前田晃伸氏だという。みずほフィナンシャルグループの社長・会長を歴任した。  NHKの会長は、これで5代続けて大手企業経営幹部から選ばれている。福地茂雄氏(アサヒビール)→松本正之氏(JR東海)→籾井勝人氏(三井物産)→上田良一氏(三菱商事)と続いたが、いずれも1期3年で退任している。  前田新会長は大規模災害に備えた大阪局の機能強化に熱心だと聞く。角さんの後任として2019年、大阪局長に就任していたA氏に実現のメドをただしたところ、数年先と答えたようだ。これが機能強化に後ろ向きだとして、前田会長自ら更迭を決断したと言われる。  A氏はわずか1年余りで大阪局長の職を解かれ、異動先は放送総局特別主幹。そんな役職はそれまでないので、東京・渋谷のNHK本館の役員フロアの一角をパーテーションで仕切って新たに部屋を作り、そこに机とパソコンを置いてA氏の部屋とした。  入り口には「A特別主幹室」と表示されているという。これについては「A氏だけの役職、部屋ということを象徴するようで悲哀を感じる」と漏らす職員がいる一方、「役員フロアの一角に個室を与えられたんだからむしろ好待遇では」と指摘する声もある。  ちなみにA氏は『プロジェクトX 挑戦者たち』『プロフェッショナル 仕事の流儀』『ドキュメント72時間』といった人気番組の企画に関わったドキュメンタリーの名プロデューサーで、慕っている職員は少なくない。  大阪局長だった2020年9月17日に大阪弁護士会が行ったA氏のインタビュー記事が大阪弁護士会のウェブサイトに掲載されている。この中では、2020年度後半放送の大阪局制作の連続テレビ小説(=朝ドラ)『おちょやん』についても語っている。  その2週間後に異動が発表されるとわかっていたらこのインタビューは受けないだろう。突然の人事だったことが伺える。
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「ブーメラン人事」の本当の理由は別にある!?
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