『Fetch The Bolt Cutters』Fiona Apple
2020年で最も評価の高かったアルバムは、「ビリー・アイリッシュの元祖」とまで呼ばれ再評価高まる、「’90年代の傷ついた世代の天才少女」、フィオナ・アップルの8年ぶり5枚めのアルバムにして最高傑作だ。
彼女自身からほとばしる鼓動を叩きつけた肉感的なピアノと溢れ出す思いを本能のままに吐き出した咆哮。たったこれだけの限られたミニマムな表現手段で、彼女ほど多彩かつ豊かな表現をできる者はいない。
『Folklore』Taylor Swift
今やアメリカ音楽界を代表する盟主となったテイラーが、大衆的なポップ路線をかなぐり捨て、自身のルーツ・ミュージックであるフォークに真剣に向かい合った一大転機の会心作。
共演者のザ・ナショナル、ボン・イヴェールはアメリカのインディ音楽界でも最も先進的な存在ゆえ、ついていけるか心配もされたテイラーだったが、ストイックでシリアスな路線を見事にものにし、アーティストとしての脱皮に成功した。
BLMのアンセムを生んだいぶし銀コンビ
『Punisher』Phoebe Bridgers
そのテイラー・スウィフトと今年なにかと比較された、テイラーより5歳年下のアメリカの女性シンガーソングライターがフィービー・ブリッジャーズ。
3年前のデビュー当時から一貫してインディ・フォークのスタイルの彼女だが、2作目となる今作では優しく語りかけるフォーク、カントリーからストリングスを配した華麗なラヴ・バラード、アッパーなロックンロールまで多彩に展開。グラミー賞4部門ノミネートで一躍注目を高めた。
『RTJ4』Run The Jewels
ジョージ・フロイド事件以後、「ブラック・ライヴズ・マター」で揺れたアメリカ黒人社会の声を代弁したのは45歳のいぶし銀コンビ、キラー・マイクとEL-Pによるラン・ザ・ジュエルズ。
かねてから歯に衣きせぬ痛烈な社会批判で知られていた彼らは4作目にあたる今作で「息ができない」というジョージ・フロイド最後の言葉を予見した楽曲「Walking In The Snow」で世を震撼させることに。
『Map Of The Soul:7』BTS
今年、世界で最も活躍したアーティストといえば間違いなくBTS。コロナ禍でライブ活動が完全に滞るなか、彼らは卓越した歌、ラップ、ダンスで至るところでパフォーマンスを展開。ポジティヴなメッセージで世界中を勇気づけた。
2月に発表された本作では4人のシンガー、3人のラッパーの個人技を過去最高に掘り下げ、サウンド的にもKポップの枠を超えた次元に突入した。