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厚生労働省が男性の育児休業取得率の向上や子育てへの参加を推進するために発足した「イクメンプロジェクト」は今年で10年目を迎える。
いわゆるイクメンという言葉自体は広まりつつある一方、企業によっては育児休業の制度が形骸化している側面もある。「キャリア」と「育児」の両立がないがしろにされたり、十分な育児休業期間を取得できなかったり。
企業側が子育てしやすい職場環境づくりや制度設計を推進しなければ、イクメンとは名ばかりなものになってしまうだろう。
そうしたなか、厚生労働省が毎年開催している「イクメン推進シンポジウム」が今年も11月20日に行われた。
シンポジウムでは、男性社員の仕事と育児の両立を推進する企業を表彰する「イクメン企業アワード」のグランプリが発表された。36社の中から選ばれたのは積水ハウスと技研製作所だ。
イクメン企業アワード2020 表彰式の様子
建設工事に携わる技研製作所は男性社員が8割以上を占めており、2008年~2018年度までの10年間男性育休取得率は0%だった。そのような状況を変えるため、アンケートによる意識調査の実施を行い、また社内イントラネットへ育児休業取得マニュアルや育休取得後の収入予測ツールを載せ、男性社員が育休を取得しやすい環境を整備した。
さらに、役員自らが「男性育休取得推進宣言」を行い、全社を上げて育児休暇を申し出にくい職場環境の改善に取り組んだ。
その結果、男性育休取得率は30%にまで上昇し、さらに平均取得日数も110.2日と非常に高い水準だったことがグランプリ受賞の決め手となった。
技研製作所は、どのようにして育休取得率を急上昇させていったのか。
同社の溝渕千賀氏は「配偶者が出産しても、男性はそのまま働くことが常態化していた社内背景が、プロジェクトを発足してイクメン推進を図るきっかけになった」と話す。
「2008年~2018年度までの10年間、男性の育休取得率は0%で、男性が子育てに参加するということとは無縁でした。
その理由としては、男性が仕事を休んで子育てする文化が社内に根付いていないこと、また育児休業を取得することでのメリット・デメリットが可視化されていないこと、収入面や復職した後のキャリアに対する不安が残ることなどがありました。育休を取得したくても申し出にくい職場環境になっていたんです。
こうした状況を打破すべく、まずは男性育休取得の課題を洗い出すために意識調査を実施しました」
全社員を対象に男性育休に関する知識や意識調査を行ったところ、子供を持つ男性社員の大半が「思い返せば育休を取得した方が良かった」という考えを持っていたことが判明。
さらには、育休取得による収入減や同僚への仕事の負担増を懸念し、育休取得に踏み切れないといった課題が浮き彫りになったという。