アン・デオール / PIXTA(ピクスタ)
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。本日は、表情分析の専門資格を持つT・Hさん(37歳・男性)からビジネスの現場での表情観察・分析スキル活用法について伺ったお話を紹介したいと思います。
福島県郡山市にお住まいのT・Hさん(37歳・男性)。金融・保険業に15年以上携わり、営業、クレーム対応、監査、部下指導全般など様々な職種を経験されてきた現役のビジネスパーソンです。
金融・保険業に15年以上携わり、微表情検知スキルを活用して部下指導に勤しむT・Hさん(37歳)
趣味として、メンタリズムやマジックを行う中で、観察の重要性に気づき、表情分析に出会ったとのことです。趣味が高じて表情分析の専門資格であるFACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)を取得されました。ここ数年、T・Hさんは、部下指導をされることが多く、指導や教育の場面で表情観察・分析スキルを活用されることが多いそうです。
以下、T・Hさんの体験談です。
私は教育係として営業実績の上がらない営業パーソンに同行して教えることが多々あります。ある日、一人の部下がお客様に対し一生懸命商品の説明をしていました。お客様も頷きながら話を聞いていましたが最後の最後で契約に至らないというケースがありました。
私は、部下が営業をしている様子を横で一切口を出さず、観察していました。その時、私はお客様の眉に注目していました。時折、お客様の眉は下がり眉間にしわを寄せながら頷いていました。これは熟考を意味する表情です。お客様は商品のメリットを十分に理解されていなかったのだと考えられます。この様子に気づいた私が営業に割って入ってメリットの説明をさせて頂いても良かったのですが、それでは教育効果がありません。成功するには、失敗という悔しい経験が必須です。
一旦帰社した後、部下に話をしました。
私:何がダメだったと思う?
部下:わかりません
本人は全く気づいていませんでした。そこで私は、「言葉をもっと簡単にしてゆっくりしゃべること、そして要所要所で確認をとること。この二つを意識して下さい」とアドバイスをしました。
後日、同じお客様のところに伺いました。「前回話を聞いたからもういい」と言われましたが、「説明不足のところがありましたので」と言うと、再度話を聞いてもらえることになりました。
今度は事前に練習した通りに、部下は簡単な言葉でゆっくりと話していきました。すると前回とは違ってお客様の眉間にしわはなくなり、眉が上がるようになりました。眉が上がる表情は理解したり、興味を持ってくれているときに生じます。すると、お客様が
お客様:そういった意味だったのか。じゃあ、それにしようかな。
と言って下さり、契約に至ることが出来たのです。
お客様の表情を気にすることによって、お客様が商品に興味を持っているのか、内容を理解しているのかを知ることができます。
理解していなければ眉が下がったところで、「どこか質問がありますか」「わからないところありますか」など先を急がず話を聞くことで、理解して頂けたり、はじめから興味を持っていない様子であれば違う商品を進めることができます。表情を観ることで相手を理解することができます。ビジネスは相手を理解することが最も重要な要素の一つなのです。