映画『アンダードッグ』はさながら“3倍ロッキー”!負け犬ボクサーが掴み取る、勝敗を超えた“何か”を知り、咽び泣け。

人生の縮図としてのボクシングと、勝敗を超えた“何か”

 武正晴監督は、「ボクシングになぜ魅せられてしまうのか」の理由について、「1ラウンド3分、1時間にも満たない試合のリング上に、人生の縮図を垣間見せられる刹那があるから」「憎くもない相手と殴り合う因果のボクサーたちにとって、リングという領域は、勝敗を超えた“何か”を掴み取れる場所なんです」などと語っている。
(C)2020「アンダードッグ」製作委員会 

(C)2020「アンダードッグ」製作委員会 

 この『アンダードッグ』における3人のボクサーそれぞれもまた、単純な勝ち負けという価値観では推し量れない、何かを見つける。それは人生をかけてでも見つけたい、掛け替えのないものであるだろう。彼らが具体的に何を手にするのか、その答えが提示される瞬間には、咽び泣いてしまうほどの感動がある。ぜひ、スクリーンで見届けてほしい。

合わせて観てほしい、2つの日本のボクシング映画

 最後に、本作『アンダードッグ』と合わせて観てほしい、2つの日本のボクシング映画を紹介しておこう。 『百円の恋』(2014) 百円の恋 32歳になっても実家にひきこもり、自堕落な生活を送っていた女性が、ボクシングと出会い、人生の意義に目覚めていく。『アンダードッグ』と同じく監督・武正晴×脚本・足立紳のコンビによる作品であり、“女性版ロッキー”と呼ぶべき1作。主演の安藤サクラの熱演は各所で絶賛を浴び、第88回アカデミー外国語映画賞の日本代表に選ばれるなど高い評価を得た。 『あゝ、荒野』(2017) あゝ、荒野 境遇も性格も正反対の2人の男がボクシングに出会い、時には衝突し、時には高めあっていく様を描く。押しも押されもせぬ人気俳優の菅田将暉と、韓国出身の俳優ヤン・イクチュンのW主演作。原作となるのは1966年に出版された寺山修司による小説。『アンダードッグ』とはボクシングが題材である以外にも、過激な性描写がありR15+指定がされていること、前後編で紡ぐ大ボリュームなど、共通点が多い。  これらを『アンダードッグ』と合わせて観れば、日本のボクシング映画が存分に世界と渡り合えるクオリティであるということが、間違いなくわかるだろう。    なお、『アンダードッグ』の配信版は、ABEMAプレミアムにて2021年1月1日より全8話が一挙配信開始予定となっている。劇場版が3人の男たちのドラマを中心に追った内容である一方、配信版は彼らを取りまく登場人物にも視野を広げた群像劇色の濃い内容となっているそうだ。劇場版と合わせて、こちらも鑑賞してみてはいかがだろうか。 <文/ヒナタカ>
雑食系映画ライター。「ねとらぼ」や「cinemas PLUS」などで執筆中。「天気の子」や「ビッグ・フィッシュ」で検索すると1ページ目に出てくる記事がおすすめ。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」 Twitter:@HinatakaJeF
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