ソフトウェアは悪意のある道具か? Git HubのYouTube動画DLソフト削除騒動から考える

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M. H. via Pixabay

GitHubが、YouTube動画のダウンロードツールを削除

 10月末のことだが、全米レコード協会(RIAA)から要請があり、GitHub が youtube-dl というソフトウェアを削除したということが、プログラマーの間で話題になった(TechCrunch Japan)。  youtube-dl は、Youtube などのサイトから、動画をダウンロードするためのコマンドラインプログラム(ウィンドウの表示なしで利用するプログラム)だ。プログラムは Python で書かれており、UNIXユーザー(Linux、macOSなど)はソースコードから利用でき、WindowsユーザーはEXEファイルをダウンロードして利用できる。対応サイトは1000以上あり、ニコニコ動画などもある(youtube-dl)。  パブリックドメインのコンテンツのダウンロードに便利なツールだが、著作権で保護されているコンテンツもダウンロードできる。つまり、問題のない使い方もできるが、問題のある使い方もできるプログラムというわけだ。  youtube-dl の正当な利用方法としては、「ファイルをダウンロードしたあと、アクセシビリティのために再生速度を変更する」「人権闘争における証拠の保存」「ジャーナリストのファクトチェックの支援」「クリエイティブコモンズライセンスまたはパブリックドメインの動画のダウンロード」などがある。  全米レコード協会は、この youtube-dl を、技術的保護手段を回避し、使用の許可なく録音物を複製および配布するソフトウェアとして削除要請をした(GitHub)。  youtube-dl のFAQには、著作権の侵害に特化したサービスのサポートは含まれないと書いてある(ytdl-org)。  11月の下旬になり GitHub は、削除した youtube-dl は、著作権を侵害していなかったとして復活させた(GitHubITmedia NEWS)。理由は、プロジェクトが技術的保護手段を回避していないためだという。  また GitHub は、開発者の負担を軽減する措置も講じると発表した。デジタルミレニアム著作権法(DMCA)第1201条に基づく削除要請のプロセスを見直して、専門家によりレビューをして、不当な申し立ては拒否する。また、開発者防衛基金として100万ドルを寄付して、不当なDMCAセクション1201の削除請求から保護する。こうした措置を講じるとした。

デジタルミレニアム著作権法(DMCA)

 さて、今回の騒動の元になったデジタルミレニアム著作権法(DMCA)と、その第1201条について話をしよう。  デジタルミレニアム著作権法は、1998年に成立して、2000年に施行された米国の改正著作権法だ。DMCAは、音楽や映画といったコンテンツを保護するためのものだ(コトバンクe-Words)。インターネット時代に対応して、ネットに不正に公開されたコンテンツの配布を停止したり、拡散を防止したりする。  成立当時、海賊版コンテンツが横行していたために、こうした法律が作られた。大まかな把握としては、著作権が侵害されていると申告すれば、速やかに削除されるという流れになる。この流れは、以下のルールによって成立している。  著作権侵害コンテンツがウェブサイトなどに投稿された場合、通報後すみやかに削除すれば、サイトなどの運営者は免責される。また、侵害の通知を受けて削除したことを発信者に通知し、その反論を取り次げば、発信者の被った損害について、サイトなどの運営者は免責される。  そのため、通報があれば、まず削除して、反論があれば受け付けるというインセンティブが働く。  また、今回の争点となった第1201条は、コピーガードをはじめとする技術的保護手段の回避禁止についてのものだ(Legal Information Institute)。この場合の技術的保護手段の回避とは、スクランブルされた作品のスクランブルを解除する、暗号化された作品を復号化する、またはその他の方法で技術的手段を回避、バイパス、削除、非アクティブ化、または損なうことを意味する。  GitHub が問題ないと判断したのは、youtube-dl は、特にこうしたことをおこなっていなかったからだ。
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デジタルミレニアム著作権法の悪用
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