ミスコン廃止の上智大が挑戦した、新たな「ルッキズムに向き合うコンテスト」に覚えた違和感

「社会課題を発信するコンテスト」への疑問

 このコンテストの肝は、「社会課題を発信するインフルエンサーとしての活躍を競う」とした点だ。そのため、SDGs部門というこれまでにはない審査基準も設けられた。候補者たちは、SNS上でSDGsに関する発信を行うことに努めた。このコンセプトには学生・教員からの批判も多く、学内新聞の取材に上智大学の三浦まり教授は「SDGsの理念は世界の問題を皆で協力して解決することであり、個人が競うものではない」「HPで強調されるのは、出場者のメッセージではなく写真だ。服装も画一的で、必然的に顔が個性になっている」とコメントしている。  しかし、そもそも候補者たちのTwitterでのフォロワーは軒並み数百~二千人程度。これは例年の上智大学のミス・ミスターコンテスト候補者のフォロワーを大きく下回る数だ。「社会課題を発信する」といっても、SNSでの発信力はこれまで比べ小さいものになってしまっている。  オンライン上で行われた肝心の本選も、Youtube上での無料配信にも関わらず100~400人ほどだった。「新しいコンテストが開催されること」はメディアでも取り上げられ注目を集めたが、コンテストそのものはさほど盛り上がらなかった印象だ。  SDGs部門の肝心の審査基準は「部門への参加意欲と社会発信度を合計し受賞者を決定」とされているが、詳しい基準はHPには明示されておらず、どのように決まったのか外からは分からない。本選でSDGs賞の受賞者が発表された時ですら、驚くべきことに受賞理由は一言も説明がなかった。非公開の内部資料によると「活動報告会などを開催し、教授やSDGsを推進する協賛企業が審査をする」とのことだが、協賛企業が審査をするとなれば純粋な社会貢献度のみで審査がなされるのかという懸念が当然生じる。本選の終了後、NHKやTBSなど大手メディアがコンテストを取り上げたが、これまで述べた問題点への指摘は無かった。  とはいえ、コンテストの意義である「議論を起こすこと」については大きな成果があったと言える。本稿も含めて、新たなコンテストの開催は議論を呼び、学内外が大学ミスコンやルッキズムなどジェンダーの問題について考える契機になった。主催代表者として奔走した荒尾奈那さんに敬意を示すとともに、今後コンテストがどう変わっていくにせよ、良い方向に向かうことを一学生として願いたい。

大学ミスコンの問題点は、「ルッキズム」なのか?

 ここまで、批判的にソフィアンズコンテストについて言及してきた。しかし、これまでのミスコンもまた、多くの問題点を抱えていただろう。特に、近年のミスコンの変化について掘り下げて考えていきたい。  既に「ミスコンおじさん」の問題については述べたが、5年ほど前からミスコンはSNSでの人気集めが重要な要素になっている。ミスコン候補者にSNS上で反応しているアカウントのうち、開催大学の一般学生は少数だ。出場者がSNS上で目立つことによりコンテストそのものが盛り上がる場合もあるので一概に悪いこととは言えないが、SNSの登場前に比べれば学生の手からは離れたイベントになったのは確かだろう。  また、今の大学のミスコンは企業との結びつきが強すぎるという問題もある。90年代からミスコンの出身者が女子アナウンサーになる、という流れが加速していき、2010年ごろからさらに急増。モデル、アイドル事務所などに所属する出場者も増え、出場者のキャリアのための登竜門としての要素が強くなっていった。  同時に、協賛企業との結びつきも強くなっていった。企業から見れば、普通の代理店を通すよりも安く、フォロワー数のいる女子大生を使ってPR活動が出来るから好都合だ。ミスコン出場者のSNSにはスポンサー商品のPRが溢れかえっている。最近は大手通信会社のような大口スポンサーも珍しくない。出場者の自己実現に繋がるという意味では価値があるが、本来は一般学生のエンターテイメントであるはずのイベントとして見れば歪な状態だ。  元々は、学内に設置された投票箱に学生や来場者が投票するだけだった大学のミスコン。今のミスコンは本当に学生の方向を向いているだろうか?  「ミスコン=ルッキズム」といった批判がされがちだが、SNSでの人気集めコンテスト化、企業との結びつきなどで、もはや学生のためのコンテストではなくなったことが最大の問題点だと考える。ジェンダー的な観点からも、ミスコンは多くの問題点を抱えていると言えるが、それ以前の問題がここにある。
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現役大学生記者が考える「これからの大学ミスコン」
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